SMTの工程では、PCB(プリント基板)に各種部品を半田付けしていく。部品メーカーから納入されたPCBに、トレーサビリティのために必要なQRコードやシリアル番号などの各種刻印をし、その後SoCなど細かな各種部品を置く機械を通り、その後オーブンに入れて半田付けする。
その後複数のチップが剥がれないようにするためのボンド付け、サーマルグリスの塗布などをし、光学機器によるチップが正常に取り付けられているかどうかの確認をした上で完成する。P10のSMTでは2枚一組でラインに流され、最後の段階でカットして1枚のマザーボードとして組み立てられる。
組み立てラインでは、サプライヤーから納入されたディスプレイ、バッテリ、本体のボディ、各種ケーブル、そして前工程で製造されたシステムボードが工員の手により一つ一つ組み込まれていく。SMTのラインは自動なのに、組み立て工程は人力なのは、その方が効率がいいからだ。
このことは、別にファーウェイの工場だけが特殊というわけではない。他のスマートフォンの工場でも同じだし、もう少し大きなPCでもやはり組み立ては人力だ。しかし、検査工程は人力だけではない。検査に関してはカメラで撮影してコンピュータの目により確認するなど、人間だと見落としがちなミスが起きないように工夫されている。そうした検査手法は日本国内のPC製品の工場などでもよく使われている手法だ。率直に言って、中国の工場と日本の工場のレベルは確実に縮まっている──いや、差はほとんどないレベルになってきていると感じた。
なお、検査工程はそうした外観だけでなく、LTEやWi-Fiなどの電波関連、GPSなどのセンサ関連、そしてちょっとした落下試験まで行われており、それらをパスしない限りは出荷されないという。確かにこれだけの厳しい試験をやっていれば、品質は大きく向上するだろうと感じた。
そうした検査工程が終わり、出荷先別のソフトウェア(例えば日本向けなら日本語ソフトウェアをインストールするなど)の導入が終わると、液晶保護シートが貼られて箱詰めされて出荷に回される。
マー氏によれば、中国製品の品質に対して疑問を抱く日本のユーザーが今もいるという状況は理解しているという。今後もそうした日本のユーザーの懸念を少しでも解決する努力をしていくと述べた。
たとえば、中国のメーカーと言うと、日中の複雑な政治状況を背景に、プライバシーに関する懸念が日本のユーザーの間で取り沙汰されることは少なくない。そのことについて率直にマー氏に聞いてみると「ユーザーのプライバシー保護などについて、ファーウェイを含めて中国製品が直面してきた品質問題ではある。1つだけ申し上げたいのは、弊社は通信製品を取り扱っており、長い時間をかけて日米欧の通信事業者とビジネスをして他国の基準を学び、それを満たそうと努力してきた。現在弊社のプライバシー保護の基準は世界で最も厳しいEUの規制を満たしており、他の地域はその厳しい基準を適用することで対応している」と述べ、今後もプライバシー保護に関してはEUの法律を満たすことを続けていくと説明した。
また、製品の品質という観点でも、日本向けの製品には特に注意を払っているとマー氏は説明する。「日本向けの製品は、外観検査、落下試験などに特に力を入れている。複数のサプライヤーから供給されている部品の場合、品質が同じであることを前提に、できるだけ日本のサプライヤーの部品を使っている」とし、日本向けには特別な配慮をしていると語った。
実際、ファーウェイのスマートフォンは世代を経る度にどんどんよくなっており、P9以降は“うるさ方”がそろっているメディア業界でも多くの関係者が高い評価をしている状況だ。今後登場する、Mateシリーズの新製品となるMate10では、どのような機能を実装してくるのか、そして完成度がどう上がるかについて引き続き注目していきたい。
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