ファーウェイ、スマホ製造工場を日本メディアに初公開--世界第3位の高品質戦略とは - (page 2)

グローバルでも市場シェアを伸ばし続けている理由

 ここ近年、ファーウェイはスマートフォン向けのビジネスに力を入れており、毎年市場シェアを伸ばしている。ファーウェイのシュウ氏によれば2016年第2四半期に9.3%だったスマートフォンのグローバル市場での市場シェアは、2017年第2四半期には11.3%に拡大しているという。


スマートフォンは年々売り上げや台数が増加している

市場シェアも11.3%で3位の座を確実にしている

 そうした売り上げを伸ばしている最大の要因は、研究開発への膨大な投資だ。シュウ氏は「この10年間の研究開発への投資は450億ドル。これは売り上げの10%に相当する」と説明する。そうした多額の研究開発費を使ってさまざまな開発をしており、日本市場のような製品の品質に厳しい市場でも受け入れられるP10やP10 Plusのような製品が出来上がっているのだ。


Huawei Technologies CQO マー・ビン氏

 ファーウェイではそうした品質の管理を徹底するため、CQO(Chief Quality Officer、最高品質責任者)を置き、CQOが製品の品質を確保する責任者として、設計、製造などのプロセスで幅広く品質管理を行っている。Huawei Technologies CQO マー・ビン氏は「1台のスマートフォンの設計には15〜18カ月の時間がかかる。その中で、200〜500の部品を利用するが、そうした部品の品質、そしてシステムとして組み立てた後も含めて一つ一つチェックしていく必要がある。それはわれわれだけでなく、サプライヤーも含めてやらないといけない。それがチャレンジだ」と品質管理の難しさを語る。

 実際、マー氏によれば、あるスマートフォンの設計中、カメラのピント合わせに問題が発覚したことがあるという。その原因を探っていくと、カメラのサプライヤーから供給された部品に問題があることがわかってきた。カメラのサプライヤーを探り、サプライヤー側がカメラに使っているモーターを交換したのだが、実はそのモーターの接着剤に問題があったと最終的に判明した。

 マー氏は「この例のように、大事なことはサプライヤーと一緒に品質管理をやることだ。われわれは1次サプライヤーだけでなく、2次、3次のサプライヤーも含めて品質管理をしており、合計で5〜600人のエンジニアがサプライヤーに出向いて品質を確保している」と説明。ファーウェイの内部だけでなく、部品を供給するサプライヤーを巻き込んで品質を上げていく、そうした努力を絶え間なく続けているとした。

P10は東莞市にある工場で生産--最新の生産・検査設備とは

 そうして設計、開発されたP10シリーズなどのスマートフォンは、ファーウェイの本社がある深セン市(香港に隣接する中国のシリコンバレーと呼ばれるIT企業が集中しているかつての経済特区)に隣接する、東莞市にある同社の工場で生産されている。


ファーウェイの東莞市にある工場のスマートフォンライン全景。手前がSMTで、奥側がシステム組み立て工程(写真提供:ファーウェイ)

 この東莞市にある工場は、2012年から建設が開始され、2013年に量産が開始された比較的新しい工場になる。この工場には18のラインが用意されており、月産130万台のキャパシティを持つ。ファーウェイの製品でもP10シリーズなどのハイエンド製品が生産されている。筆者が訪れた時には、ちょうどP10が生産されており、P10のラインを見学した。なお、工場では写真撮影が禁止だったため、写真はファーウェイ提供によるもの。

 ラインは大きく2つのプロセスに分かれており、1つはSMT(Surface Mount Technology:表面実装技術)で、もう1つがシステムの組み立て工程だ。簡単に言えば前者ではシステムボードを製造し、後者はそのシステムボードや、サプライヤーから納入されるディスプレイ、バッテリなどを本体ボディに組み込んでいくプロセスになる。

 SMTの工程では、サプライヤーから納入されたPCB(プリント基板のこと)に、各種部品を半田付けしていく。半田付けと言っても、作業員が手で半田付けしていくのではない。完全に機械化されており、ほぼ全自動で実装から半田付けまでを行う。

 機械は外部のベンダーから購入したものと、ファーウェイのエンジニアが自社で開発したものが混在しており、多くは市販のものをベースにカスタマイズしたものとなっている。日本のPCメーカーが使っているようなものと同じレベルの高密度基板実装向けの機器が利用されており、かなり小さな基盤に細かな部品が高密度で基盤に実装されていたのが印象的だった。


SMTライン(写真提供:ファーウェイ)

PCBにQRコードの刻印などを入れる機械(写真提供:ファーウェイ)

SoCなどのチップを置いていく機械。ロールになっているフィルムの中にSoCや抵抗などが入っている(写真提供:ファーウェイ)

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