同校の最大の特徴は、前述した「Advanced Program(アドバンスド プログラム)」だ。単位にはつながらないが、 卒業後の大学進学や就職などに役立つ知識やスキルを学べる選択式の課外授業のことで、漫画家、ボーカロイド、ライトノベル、プログラミング、パティシエ、中国語など、幅広い授業が受けられる。ここにはカドカワグループの“資産”がフル活用されている。
たとえば、プログラミング授業ではドワンゴのトップエンジニアから実践的なプログラミングを学ぶことができる。実際に同社の新卒教育と同じ内容を高校生に教えており、3年間みっちり学べば、PCを触ったことがない状態から、ScalaやJavaScriptなどのプログラミング言語を用いて、ニコニコ動画のような動画を投稿・再生しコメントを共有できるサービスを構築できるほど、即戦力のレベルまで成長できるという。もちろん、スマホアプリやウェブサービスも開発できる。
また、クリエーター志望者向けには、大手出版社であるKADOKAWAから作品を出版する森村誠一さんなどの作家から、アイデアを物語にする力や必要なテクニックを教われる文芸小説創作授業、カドカワの子会社であるキャリアスクール運営のバンタンが抱えるプロ講師から、イラストや声優、ゲームプログラミングなどを学べる授業、ボカロPの40mPさんからDTMやボーカロイドによる音楽の作り方を学べる授業などを用意。
さらに、多くの人気コンテンツを生み出している「電撃」レーベルで活躍するトップクリエイターから、エンタメを作り出すためのノウハウを教わることもできる。たとえば、「ソードアート・オンライン」の作家・川原礫さん、「キノの旅」の作家・時雨沢恵一さんから学ぶライトノベル授業。「灼眼のシャナ」のいとうのいぢさんや、キノの旅の黒星紅白さんによるイラストレーター授業など。生徒たちにとっては、憧れのクリエーターから直接教わることができるまたとない機会だ。
N校で学べるのは、プログラミングやクリエイティブだけではない。日本各地で農業・漁業・伝統職人などの職業を体験できる実践型インターンシップ授業も実施している。現地の自治体と協力して、 約5日間ほど宿泊しながら仕事への理解を深められる授業で、一度に十数人が参加する。2016年は15回ほど実施したが、応募者が多く抽選になるほど反響があったという。参加者のアンケートでは、ほぼ全員が「職業体験に参加してよかった」と回答するなど、満足度も高かったという。
「特に刀鍛冶の職業体験が人気で、(戦国シミュレーションゲームの)『刀剣乱舞』が好きな女の子からの応募が多かった。若者にとっては地方の文化に触れる機会になり、 地方も後継者探しに困っている伝統工芸を若者に知ってもらえる。そういう意味で職業体験は双方に喜ばれる授業。2017年は日帰りの体験も増やしている」(奥平氏)。
学校の醍醐味の1つとして、放課後に仲間たちと切磋琢磨する部活動も忘れてはいけないが、もちろんN高にも部活動はある。ただし、リアルではなくネットの部活だ。たとえば、「ウイニングイレブン」を使ったサッカー部や、オンライン将棋対局サービス「将棋倶楽部24」を使った将棋部、さらに格ゲー部や囲碁部などが活動している。全国の生徒たちとオンライン対戦をしたり、生放送や動画を配信するなどして活動する。特別顧問として、将棋部では藤澤一就八段、サッカー部では元日本代表の秋田豊さんなど、その道のプロが指導してくれることもポイントだ。
このほか、行事なども生徒たちが主体的に企画しており、ニコニコ超会議内での学園祭のブースも、料理やステージの内容は生徒たちが議論して決めたそうだ。実は学園祭の開校式の式次第も生徒が考えたのだという。奥平氏は「最初は生徒から『開校式ですから真面目に喋ってください』と言われたのに、最後には結局『校長先生、これはお祭りなので楽しく』と言われたり(笑)。生徒が校長に挨拶の喋り方を指示するような学校は他にはない」と嬉しそうに話す。
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