9月開催とみられる次期iPhone発表イベントが近づくにつれ、ガジェット業界には様々なうわさが飛び交っている。発表されるのは2モデルなのか3モデルなのか? ハイエンドの有機ELディスプレイモデルは幾らになるのか? 顔認証システムは「Touch ID」に完全に取って代わるのか、それとも代替手段なのか? そして、iPhoneはついにワイヤレス充電に対応するのだろうか?
だが、最後の問いは誘導尋問だ。なぜなら「ワイヤレス」充電の定義は人によって異なるからだ。
サムスンのGalaxyシリーズなど、Android端末の多くは充電ケーブルをつなげずに充電器に置いて充電できることは周知のとおりだ。こうした充電器は最近、カフェやハンバーガーショップのカウンターや、IKEAで購入できる家具にまで組み込まれるようになってきた。だが、これらの充電器は壁のコンセントに接続する必要がある。スマートフォンに直接つながないだけで、ケーブルは依然として存在する。
「ワイヤレス充電」は基本的に間違った名称だということを遠回しに言ってみた。「本当の」ワイヤレス充電とは、数cmではなく数m離れたところにあるバッテリを充電することであり、そうした技術も実際にある。
遠隔からのワイヤレス充電は技術の大変革になり得る。実現すれば、部屋に入った途端にスマートフォンの充電を開始できるのだ。この技術は、ポータブルスピーカから補聴器まで、日常生活で急増しているスマートデバイスにとっても朗報となるだろう。安全性についての懸念を払拭し、大量市場の消費者向けデバイスでの採用が待たれる。
そこで、次期iPhoneがワイヤレス充電に対応するかどうかについて話す前に、Appleが採用する可能性のある幾つかの技術の違いを整理しておこう。
電動歯ブラシで広く長く使われている電磁誘導方式は、今日の「ワイヤレス」充電デバイスや周辺機器のほとんどで採用されている最も一般的な技術だ。誘導充電方式には2つの主要な規格がある。「Qi」(エネルギーを表す中国語に由来し、「チー」と発音する)と「Powermat」だ。
2つとも電磁共鳴技術を使っており、最大4cmの距離から充電可能だ。つまり、例えばスマートフォンを充電器に置く際の「スイートスポット」が広くなったり、充電器を木製やプラスティック製の薄い板の下に隠せたりする。
Qiは様々なメーカーのスマートフォンで採用されており、マクドナルドは一部店舗内のテーブルにQi方式の充電器を埋め込んでいる。一方、Powermatを埋め込んだテーブルは、米国のStarbucksや空港のラウンジなどに導入されている。
この2つの規格はそれぞれ、競合する規格団体によって支えられている。Qiを策定したのはワイヤレスパワーコンソーシアム(WPC)で、PowermatはAirFuel Allianceだ。後者は、Powermatおよびそれを策定したPower Matters Alliance(PMA)が2014年に第3の競合ワイヤレス規格(Alliance for Wireless Power、略してA4WP)に統合されて誕生した。
良い知らせは、近年ではこの競合がゼロサムゲームではなくなってきていることだ。例えばサムスンは、最近のハイエンドGalaxyシリーズ(Galaxy S7およびS8を含む)で両方の充電規格をサポートしているので、ユーザーはマクドナルドのQiを埋め込んだカウンターでも、StarbucksのPowermatテーブルでも充電できる。
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