特許の善し悪しを判断する基準には、さまざまな条件が考えられる。そして、強力な特許と呼ばれる発明は、何らかの機能を実現するのに欠かせない仕組みであると同時に、実装が簡単で誰でも思いつく技術を権利化したものだ。今回紹介するAppleの特許は、そうした強力な特許の1つではないだろうか。
Appleの考案した技術は、音声認識機能を備える電子機器用のドックに関する内容。この技術を米国特許商標庁(USPTO)へ出願したところ、米国時間7月18日に「SMART DOCK FOR ACTIVATING A VOICE RECOGNITION MODE OF A PORTABLE ELECTRONIC DEVICE」(特許番号「US 9,711,160 B2」)として登録された。出願日は2012年5月29日、公開日は2013年12月5日(公開特許番号「US 2013/0325479 A1」)。
この特許で想定されるシステムの図面を見るだけでは、スマートフォンのようなポータブル電子機器と、その電子機器と接続可能なドックで構成されたシステムが描かれているに過ぎず、新規性は読み取れない。特許のポイントは、電子機器とドックの音声認識モードを切り替えるタイミングにある。
最初の状態で、ドックは音声を常時とらえるモードに設定されている。そして、何らかの音声入力があると、その入力データと、ドックに保存されている音声ファイルとを比較し、両者が一致しているかどうか調べる。「Hey Siri」や「OK Google」「Alexa」といった呼びかけでAIアシスタントを起動するイメージだ。ちなみに、この比較を実行するあいだ、ドックの音声捕捉機能はオフにされる。
比較処理で一致していないとの判断が下されると、ドックの音声捕捉機能はオンに戻され、AIアシスタント起動コマンドを再び待機することになる。一致していた場合は、ドックから電子機器に対し、電子機器の音声認識モードを有効にする命令がコネクタ経由で送信される。これに合わせ、ドックの音声捕捉機能はオフのままとなる。
つまり、AIアシスタント起動コマンドの待機はドックが担当し、音声で処理を実行するSiriなどの機能は電子機器が担当する、という技術である。このようにシステム全体として制御することで、スマートフォンのようなデバイスであってもボタンや画面を操作することなく、音声コマンドだけでAIアシスタントを起動できる、というメリットをAppleは特許明細書のなかで指摘している。
iPhoneと連携してSiriを起動させられるドック型アクセサリなどでは、注意すべき特許といえるだろう。
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