次に、分裂すると何が起こるのか見てみよう。分裂には「ハードフォーク」と「ソフトフォーク」の2種類が存在し、分裂するという点では似ているが分裂の意味合いや最終的な状態は大きく異なる。
ハードフォークは「のれん分け」
ハードフォークは、例えるならのれん分けだ。旧ルールのオリジナル通貨を残したまま、新しいルールの新通貨がもう一つ誕生することになる。ハードフォークを発生させたタイミングから、旧ルールで動く参加者と新ルールで動く参加者とで通貨が2つに分裂し、この2つの通貨はそれぞれ別の道を歩むことになる。ハードフォークの前から通貨を所有していた人は両方の通貨に残高が引き継がれる。資産は数字の上は倍になるが、資産価値が倍になるというわけではない。
2016年には「イーサリアム」という仮想通貨でハードフォークが起こり注目を集めた。イーサリアムの場合は新しいルールを適用した通貨をこれまで通りイーサリアムとし、既存のルールのままの通貨の方を「イーサリアムクラシック」と呼ぶようになった。ハードフォーク後、イーサリアムとイーサリアムクラシックの価格はしばらく乱高下したが、最終的には元のイーサリアムと新イーサリアム、イーサリアムクラシックの価値はおおよそ同じくらいになるように価格が推移した。
新旧どちらをどのように呼ぶべきかについて明確な決まりがあるわけではないが、もしビットコインがハードフォークしたら「ビットコイン」と少し異なるもう一つの仮想通貨が誕生することになる。
ソフトフォークは「道場破り」
ソフトフォークでは全ての参加者が新しいルールを受け入れれば、分裂することなく新しいルールに移行する。一方で、ルールの導入について意見が割れままソフトフォークを試みることは道場破りに近い。チェーンが分岐するという点ではハードフォークと同様だが、永続的に残ることができるのはどちらか片方だけだ。どちらかがギブアップするまで競争が続き、勝った方が新しいルールなり、負けた方は消えてしまう。消えてしまうとソフトフォークが発生したあとの送金した事実がなくなる。
そのため、ソフトフォークによる分岐が発生した場合、どちらかがギブアップするまで送金は確定しない。利用者は不便を被ることになるのだ。
ソフトフォークは、大多数の合意が取れていれば分裂することなく一つの通貨のままでルールを変更できる手段なので、これまでも何度か使われた手法だが、今回も大多数の合意が集まるかは分からない状況にある。単純に新しい通貨が生まれるだけのハードフォークと違い、合意のないソフトフォークは非常に危険だ。分裂が継続した場合、通貨としての機能に大きな混乱をきたすことになる。
なお、今回優勢になっているSegWit2xによって発生するのはソフトフォークである。
仮想通貨取引所の対応も見ておこう。
仮想通貨取引所では自分で管理しているビットコインや、別の取引所からビットコインを受け入れて、日本円などで売却したり、逆に日本円を入金してビットコインを購入し、別の取引所に引き出したりすることができる。
もし、フォークが起こる可能性があると判断された場合、取引所は一時的に受け入れや引き出しを停止する必要がある。ソフトフォークが起こると、送金を確定させるのが難しくなるためだ。旧ルールと新ルールどちらかがギブアップするのを見極めてからでないと安全に送金することができない。そのため、資産を守るためにはフォークの状況が落ち着くのを待つことになる。今回のように混乱を招きそうなソフトフォークはこれまで経験していないため、どこの取引所も対応に頭を悩ませているところだ。
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