ビットコインに訪れた“成長痛”--8月1日に予期される「フォーク」とは

光田貴(コインチェック)2017年07月20日 13時00分

 8月1日、ビットコインが“分裂”する可能性が出てきた。

 ビットコインは、取引データを記録したブロックの連なり「ブロックチェーン」をベースとしたP2P方式の仮想通貨だが、利用者の増加に伴い取引量が増えた結果、ブロックに記録できる容量の限界から、送金に順番待ちが発生するといった課題が顕在化してきた。

 このため、大勢の利用者に耐えられるよう、ブロックにどのような仕様変更(=フォーク)を実施するかの議論が白熱しているのだ。

 特に注目を集めているのは、8月1日に計画されている「UASF(User-Activated Soft Fork)」と呼ばれる試みだ。ビットコインの分裂自体は過去に何度も議論に上がっていたが、UASFの場合、強引に実行に踏み切る形を取る。今回はこれまでの議論の決着をつけるかのように、未だかつてない盛り上がりを見せている。

 なぜ、ビットコインが分裂する可能性が出てきたのか。その議論に至る過程と、フォークの結果、ビットコインにどのような影響があるのかを解説する。

なぜ今“分裂”なのか

 ビットコインで、なぜ今になって分裂騒動に発展しているのか、これまでの経緯を振り返ってみる。

 ビットコインは、ブロックチェーンという仕組みの上で動く関係上、時間あたりの取引回数に上限がある。おおよそ1秒あたり7回の送金が取引上の限界だ。この制約はビットコインが考案された当初から問題視され、世の中に普及していくうえで大きな課題になると認識されていた。その解決策としてさまざまな案が考えられたが、最善策として有望視されたのが「SegWit」とよばれる仕様を追加することだった。

 SegWitとは、ビットコインの送金機能の拡張を可能にする技術で、送金速度や送金コストを飛躍的に向上する足がかりになる。この仕様変更は、ビットコインの「マイナー」の95%が賛成の意思表示を合図に有効化されることになった。マイナーとは取引の承認作業を手がける事業者で、非常にたくさんの計算資源(電気代)を投じる代わりに、報酬としてビットコインを得ている。

 SegWitの有効化のため、2016年11月にマイナーによる意思表示が開始された(ビットコインは仕組みを一部拡張して、マイナーによって意思表示できる機能が備わっている)。「ライトコイン」や「モナコイン」など、ビットコインを模して作られた別の仮想通貨では同じ仕組で早々とSegWit有効化に成功する一方で、ビットコインはなかなか賛成票が集まらず遅れをとっていた。ビットコインは今や多くのステークホルダーが集まり、意見の統一が図れずにいる。ビットコインの知名度が高まり、価格が上昇するにつれ、多くの利害関係が生まれ、仕様に変更を加える事が憲法改正のような重みを持つこととなってしまった。

 この状況を打破するため、2017年3月に「BIP-148」という提案書がインターネット上で公開された。ビットコインのネットワーク上では計算資源をより多く費やしたマイナーが管理者として決定権を握る仕組みとなっているので、送金やトレードしている一般の利用者には意思決定をする力はなく、原則マイナーの意向に従わざる得ない。この提案書では8月1日を境に、利用者側に“実質的な”主導権を移し、半ば強引にSegWitを有効化するためのアイデアが書かれている。ユーザ主導のソフトフォークなので、これをUASF(User-Activated Soft Fork)と呼んでいる。

 最初は一人の開発者が出した提案にすぎなかったが、8月1日が近づくにつれ参加を呼びかける声や危険視する声がネット上で拡散され、多くの人の注目を集めるようになってきた。さらにはSegWit2xという仕様変更の提案も支持され始め、現在ではこちらが主流になるという見方が多勢だ。8月1日を目前にしてよりいっそう議論が過熱している。

仮想通貨は「共通のルール」で動いている

 分裂の説明の前に、前提となる仮想通貨の基本的な仕組みについて説明する。

 ビットコインを始め、多くの仮想通貨では「誰が誰にいくら送った」という送金に関わる情報(トランザクション)を全参加者が「共通のルール」にもとづいて処理することで“通貨”として機能している。

 共通のルールには、「二重支払い(一度送金したお金を再度別の誰かに送ること)をしない」や「持っている額以上は送ることができない」といった通貨としての基本的な決まりから、送金データの細かな形式までありとあらゆることが規定されている。物理的な紙の紙幣なら二重支払いも複製も起こりえないことだが、データのコピーや改ざんが簡単にできるデジタルなデータのやり取りで通貨として機能させるためには、このようなルールが不可欠だ。


仮想通貨は共通のルールで動いている

 もしこの共通のルールに従わない参加者がいた場合、異分子としてネットワークから排除されてしまう。こうすることでルールを破ったり、不正を働こうとする者を自然と排除できる。参加者は共通のルールを守るように動機づけられるため、中央管理者がいないインターネット上の通貨として機能するのだ。

 この共通のルールと仮想通貨は表裏一体であり、もしルールに変更を加えるならそれはもう別の仮想通貨と捉えることもできる。仮想通貨はビットコイン以外にも数百種類以上存在するといわれているが、それらはビットコインの共通のルールに様々な改良を加えたものである。

 今回の分裂騒動はこのルールを変更することが原因となって起こっている。参加者全員が新しいルールに賛成すれば問題なく新しいルールに移行できるが、意見が割れた場合はお互いが異分子として判別されてしまう。結果、古いルールの者同士、新しいルールの者同士でネットワークが分断されてしまうのだ。この分裂によりブロックチェーンが二股に別れることをフォークと呼んでいる。

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