「VOD元年」と言われてから数年が経ち、現在の動画配信ビジネスは一体どのような環境にあるのか。Hulu、dTV、GYAO!、DAZN、U-NEXTとVODのキープレーヤーが一堂に集い、コンテンツのあり方から、人気ジャンル、視聴デバイスに至るまでを「日経エンタテインメント!」主催によるイベント「エンタ!DAYS 2017 in SHIBUYA」で話した。
登場したのは、HJホールディングス コンテンツチーフオフィサーの長澤一史氏、GYAO 取締役の半田英智氏、エイベックス通信放送 コンテンツプロデュースグループゼネラルマネージャーの笹岡敦氏、Perform Investment Japan DAZNコンテンツ制作本部長の水野重理氏、U-NEXT 取締役 NEXT事業本部長の堤天心氏の5名。モデレーターは日経BP社デジタルコンテンツ企画部の白倉資大氏が務めた。
最初に「今ユーザーが見たいと思っているコンテンツは何か」と問いかけられると、Huluの長澤氏は「単純にランキングだけを見ると、地上波の見逃し配信コンテンツが上位に来る。ただVODはいろいろなものが見られることが特徴。そこはジレンマを感じるところ。ただコンテンツの調達には予算があって、人気コンテンツを重視してしまうことは事実」と現状を話した。
Yahoo!という強力な入口を持つGYAO!の半田氏は「コンテンツが置かれているシチュエーションが大事。例えばYahoo!のトップページを見ている人に映画のコンテンツを勧めても、時間によっては受けない。逆に月曜日の朝に『5分でわかる○○』のようなコンテンツをおすすめすると多く視聴してもらえるケースもある」とレコメンドの仕方の重要性を説いた。
DAZNの水野氏は「もちろんユーザーがひいきにしているチーム、注目試合のニーズは高いが、Jリーグを見たくて加入した人がブンデスリーガを楽しむといったように、広がる動きも結構ある。また日本のユーザーならではの特徴かもしれないが、サッカーと野球の両方を見たりと、多くのスポーツを見る傾向がある。これは今後も打ち出して行きたい部分」と、新たなコンテンツを発見するニーズを強く感じているとした。
多種多彩のコンテンツを用意するVODの中で「今後購買を強化したいコンテンツ」と尋ねられると、多くのサービスが「アニメ」と回答。中でもdTVは「(エイベックス)グループ内からヒット作品も出てきていて、アニメコンテンツのシェアは日々増えている。dTVとしてはアニメを配信するだけでなく、ドラマ化、映画化されたコンテンツ、原作のマンガなど、関連コンテンツも用意しているので、アニメを見た後もどう楽しめるのかを強化したい」(笹岡氏)と、コンテンツの豊富さを打ち出した戦略を話す。
無料動画も展開するGYAO!は「コンテンツには役割が存在する。GYAO!では新規ユーザー、久しぶりに訪れたユーザーに見たいコンテンツを聞くと映画、アニメと回答。一方、GYAO!の視聴回数を上げるコンテンツとしてアニメ、ドラマというデータが出ている。アニメは新規獲得にも継続利用にも効くコンテンツだと思っている」(半田氏)と、万能コンテンツ的な役割があるとした。
U-NEXTは映画、アニメに加え「韓流ドラマ」とコメント。堤氏は「放送による韓流ドラマの割合は下がってきているが、根強いファンは放送されなくなった分、レンタルビデオを利用している。この部分を配信ならではのラインアップでカバーすることで、ユーザーニーズに応えられる」と自信を見せた。
各サービスが自ら制作を担うオリジナルコンテンツは重要な差別化要素。この部分の強化コンテンツを聞くと、スポーツ専門のDAZNは「もちろんライブが売りだが、Jリーグのプレビューショーやドキュメンタリーなど、さまざまなジャンルに乗り出していきたい。パフォームグループ自体は英国の会社なので制作スタイルやトーンが日本のコンテンツとは異なる。そういった部分も新鮮に受け止めてもらえると思う」(水野氏)とコメントした。
一方、Huluの長澤氏はここでアニメを挙げ、「アニメは制作段階から関与していないと確保が難しい。そこが強化ポイントだと思っている」とした。
dTVは「今期に関しては恋愛ドラマ」とジャンルを選定。さらに「『トゥルルさまぁ~ず』など短尺のバラエティも強化していきたい。現時点では長尺コンテンツが多くなっているが、隙間時間に見てもらいやすのは短尺。さらにdTVにはダウンロード機能があるので、移動中、食事中といった空き時間に見てもらいやすいコンテンツを改めて見直して作っていきたい」(笹岡氏)と、オリジナルコンテンツからスタートしたVODサービスならではの視点からコメントをした。
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