シャープ、東証一部復帰に強い意思--8KエコシステムとAIoTにフォーカス

 シャープ代表取締役社長の戴正呉氏は7月7日、社内イントラネットを通じて、社員に向けたメッセージを配信した。戴社長は、月1回のペースで、社員宛にメッセージを配信しており、今回のメッセージでは、「株主様との約束、東証一部への早期復帰を必ず果たす」と題し、6月20日に開催した株主総会で明らかにした東証一部復帰などの考え方について示した。

株価上昇、復配の実現が株主への感謝の証


シャープ代表取締役社長の戴正呉氏

 東証一部の復帰については、「6月30日に、東証一部再指定の申請をした。だが、ようやく復帰に向けたスタートラインに立ったところである。決して楽観視してはいけない」とし、「これから東証による審査が始まるが、審査項目のなかでは、業績の確実性が極めて重要である。詳細は7月28日に発表する第1四半期(4~6月)決算で明らかにするが、業績は順調に推移している。いま一度、社員全員が気を引き締め、第2四半期(7~9月)、第3四半期(10~12月)も、確実に計画を『有言実行』するとともに、正々堂々の経営を実践し、東証一部への復帰を果たそう」とし、東証一部復帰に強い意思を示した。

 戴社長はメッセージの冒頭で、大阪府堺市の本社で6月20日に開催した第123期定時株主総会に、798人の株主が出席したことに触れ、「本総会では、7つの議案の説明と質疑応答をし、すべての議案を承認いただいた。所要時間は1時間7分で、これは2016年の3分の1であり、15年前の2002年に並ぶ、短時間の総会となった。順調な業績の回復や、きめ細かな対外的なコミュニケーション活動により、不安が解消されつつあると実感した。また、8Kや4Kディスプレイを展示し、その素晴らしさを体験していただくこともできた。株主総会終了後には、日本では非常に珍しい試みとなる、株主を対象とした経営説明会を開催した。説明会では、『数人の従業員と話をしたが、前向きに業務に取り組んでいる様子だった』、『引き続き頑張ってほしい』といった励ましの言葉をもらったほか、8Kを中心とした成長戦略に関する質問や意見など、当社の事業拡大への関心、期待の大きさが窺えた」とした。

 また「後日、こうした期待や声援に対する感謝の気持ちを込め、株主一人ひとりに、私からのメッセージと、謝恩祭の案内を郵送した。謝恩祭は大変好評である。しかし、さらに業績を向上させ、株価上昇、復配を実現することこそが、本当の意味での株主の皆様への感謝の証であり、その鍵となるのが、『8Kエコシステム』と『AIoT』になる」とした。謝恩祭は、株主に対して特別価格で、シャープ製品を提供するものになっている。


6月20日に開催した第123期定時株主総会

「8Kエコシステム戦略推進室」を新設、再び世界をリードしたい

 戴社長が、鍵の1つとした「8Kエコシステム」では、6月1日付けで、全社に横串を刺し、8K事業の拡大を牽引する「8Kエコシステム戦略推進室」を新設したこと、責任者として、NHK出身で放送技術の専門家である西山博一氏を取締役兼執行役員に迎えたことなどに触れ、「7月1日には、8Kエコシステム戦略推進室のリードにより、8Kをテーマとした経営幹部勉強会を開催。各事業本部の取り組みについて情報共有し、具体的なビジネス展開について議論した。今後は、各事業本部のキーマンで構成するステアリングコミッティで、さらに議論を深め、事業化を加速していく」と述べた。

 また、7月4日には、シャープとNHKが共同で取り組んできた、世界初の8K放送受信機の開発が、「放送文化基金賞」を受賞したことも紹介した。

 戴社長は「シャープは、国産第1号の鉱石ラジオ、国産第1号のブラウン管テレビ、世界初のテレビ用14型TFT液晶ディスプレイ、世界最大のデジタルハイビジョン液晶テレビなどにより、放送の進化を牽引してきた。だが、残念ながら4Kディスプレイでは他社に後れを取った。何としても、8Kでは、再び世界をリードしていきたいと考えている。そして、その8K解像度を実現できるディスプレイは、唯一、液晶だけである」とし、「液晶ディスプレイは、高い色再現性、画面の明るさ、低消費電力、高い信頼性など、さまざまな面で、圧倒的に優位なポジションにある。最近では、有機ELに匹敵する薄型化も実現している。私は、この液晶ディスプレイ技術を核にして、8Kエコシステムを早期に構築し、社会にイノベーションを巻き起こしていきたいと強く思っている。さまざまな機会をとらえ、8Kを訴求していく」とし、液晶事業を主軸におく姿勢をみせた。

 もう1つの鍵とするAIoTについては、6月1日にAIやIoTの分野で全社に横串を刺す「AIoT戦略推進室」を新設。ソニーでVAIO事業を統括するなど、IT機器に関する経験が豊富な副社長である石田佳久氏をリーダーに据え、各事業本部間の連携を密にし、AIoTの事業拡大を加速する体制を確立したことを示した。

 また、7月5日にAIoTプラットフォームやココロボードを活用した集合住宅向けIoTソリューション「つたえるーむ」プロジェクトを発表したこと、7月6日には、AIoTクラウドサービス「COCORO KITCHEN」による献立相談や音声対話操作機能を搭載した「ヘルシオ」の新製品を発表したことを紹介。「具体的な取り組みが、すでに形になりはじめており、これを皮切りとして、AIoT対応製品やクラウドサービスの開発を加速していく。さらに、こうした取り組みを通じて培ったAI技術を活用し、2018年度には、飲食店の接客や住宅設備の操作、工場の運営管理などを対象に、シャープならではのきめ細かい対話が可能な『対話用AI』の導入支援を開始したい」と述べた。

学び続ける企業風土をともに創る

 さらに、「シャープは、IoTビジネスを優位に展開できる多くな強みを、さまざまな部門が有しており、これらをOne SHARPで融合し、強みを最大化していくことが大切である。全社が力を合わせ、シャープならではの新しい事業、新しいサービスを創り上げ、『人に寄り添うIoT』を実現しよう」と呼びかけた。

 最後に戴社長は、創業者である早川徳次氏の著書である「私の考え方」の中から、「世の中は常に動いており、古いやり方、現在の方法が一番いいと信じているところに進歩はない」という一節を取り上げ、「私もまさにその通りだと考えており、進歩するためには、常に新しい技術や知識を身につけることが大切である。こうした考えから、経営幹部勉強会を開催しており、今後も、M&Aや法務の基礎知識、経営管理力の向上など、多様なテーマで開催する予定である。さらに、将来的には、こうした取り組みを全社員に広げ、社員全員のレベルアップを図っていく。『日々学び、日々成長』。私たち一人ひとりが自発的に学び続け、成長を続けることこそが、会社の持続的な成長につながる。このような『学び続ける企業風土』を、ともに創っていこう」と呼びかけた。

 東証一部復帰への申請を行い、シャープの経営の回復が着実に進展することを強調するものになったほか、8KエコシステムとAIoTという2つの領域にフォーカスした成長戦略を打ち出すものになった。

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