シャープは5月26日、大阪府堺市のシャープ本社において、2019年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。2016年8月に、鴻海精密工業傘下で再建をスタートして以来、初の中期経営計画となる。
計画では、2019年度に売上高3兆2500億円、営業利益1500億円を目指す。また、2017年3月期通期業績発表時に公表を見送っていた2018年3月期の業績見通しは、売上高が2兆5100億円、営業利益900億円、当期純利益590億円とした。
シャープの取締役社長である戴正呉氏は「2017年3月期は構造改革に取り組んできたが、新たなこの中期経営計画では、『人に寄り添うIoT』、『8Kエコシステム』を実現。2021年3月期以降の『次の100年における持続的成長』を確実なものにするために、『ビジネスモデルの変革』、『グローバルでの事業拡大』、『経営基盤の強化』の3つのトランスフォーメーションに取り組んでいく」とした。
新たな事業ドメインとして、スマートホーム、スマートビジネスソリューション、IoTエレクトロデバイス、アドバンスディスプレイシステムを設定。全社に横串を通すAIoT戦略推進室、8Kエコシステム戦略推進室を設置して、「One SHARP」としての事業推進を図る新たな体制についても言及した。
スマートホームは、2017年3月期実績で5506億円だった売上高を、2020年3月期には1兆円以上に倍増するほか、スマートビジネスソリューションは、3177億円から4500億円以上に、IoTエレクトロデバイスは4136億円を8000億円以上に、アドバンスディスプレイシステムは、8420億円を1兆円以上に拡大する。
「シャープは、2015年3月期には2000億円以上の赤字だった。だが、2016年10月以降から営業利益が黒字になった。これは私の実績。私は、有言実現の人である。計画は、2月以降に10回以上の検討を含めたものであり、自信がある。2020年3月期の目標は必ず達成する」と、計画目標の達成に強い意欲をみせた。
スマートホームでは、AIoT対応機器およびサービスの拡充、AIoTプラットフォームのオープン化による事業拡大を目指し、スマートビジネスソリューションは、オフィス関連機器およびサービスの拡充によるスマートオフィスの提案強化、スマートファクトリー事業の拡大を目指す。また、IoTエレクトロデバイスは、8Kエコシステム、IoT、車載関連デバイスの重点強化、カメラモジュールの開発強化と新規顧客開拓に取り組み、アドバンスディスプレイシステムでは、8Kディスプレイ需要の創造、FFD(Free Form Display)や有機ELなどの新規ディスプレイの早期事業化、海外テレビ事業の拡大をあげた。
また、戴社長は「中期経営計画におけるキーワードは3つ」とし、「守りから攻めへ、構造改革から事業拡大へ」、「『人に寄り添うIoT』、『8Kエコシステム』、実現に向けたトランスフォーメーション」、「経営人材の育成とチャレンジする企業文化の醸成」をあげ、「この3つを有言実現し、V字回復させる」と述べた。
一方で「シャープは、幅広い事業、独自技術、商品の独創性、革新的なデバイスという強みを持つ一方で、商品ラインアップ、デバイス設備の世代更新、グローバル展開を支える人材・リソースといった点での弱みを持つ。強みをさらに強化するとともに、マネジメント力の強化、鴻海グループとのシナジーにより、AIとIoT、8Kエコシステムといった『新技術』と、技術力とコスト力を生かした事業拡大による『グローバル市場』を当社が狙う事業機会と位置づけている」と発言した。
人に寄り添うIoTでは「人々の生活を取り巻くAIoTに対応した機器が、変化に気づいて、考え、提案してくれる新たなパートナーになる」とし、スマートホーム、スマートオフィス、スマートファクトリー、スマートシティに取り組むとしたほか、8Kエコシステムにおいては、「低価格の8Kカメラ、編集システムを実現することで8Kコンテンツを拡大すること、8K映像を配信するインフラ環境を整備、8K表示機器および映像伝送のためのインターフェースで業界を先導する」と述べた。
また、グローバル展開としては、海外に重点を置いた商品事業の拡大により、2020年3月期には、2017年3月期の1.8倍へと海外売上高を拡大。技術革新によるデバイス事業の拡大では、IoTデバイスや8Kデバイス、車載デバイスなどの成長により、今後3年間で、1.6倍の事業拡大を目指すとした。
さらに、中期経営計画の3カ年で4000億円強の設備投資をする考えを示し、「亀山工場は2004年から稼働しているが、あまり投資をしていない。今後、亀山工場には約200億円を投資して改造する。亀山工場で8Kテレビを生産する。日本のエコシステムで生産したいと考えている。一方で、シャープは液晶技術を持っており、エンジニアの将来を考えれば、米国において工場を稼働させ、アドバンスディスプレイシステムによって、一緒にシャープの未来を創出したい。社員の力を発揮するには、新たな工場を建てないといけない。米国市場において条件が合い、投資協力ができるのであれば、新たなパネル工場を作りたい。米国市場は一番大きいが、パネル工場がない。4000億円の投資計画の中にこの金額は含まれていないが、我々は政府機関ではなく、これからも100年続く企業を目指している。競争力であり、メリットがあるのでやれば、やりたい」などと述べた。
組織体制についても説明。「監査等委員会設置会社への移行と、執行役員制度の復活により、監督の強化と業務執行の機動性を強化する。シャープは、2015年には取締役が15人、執行役員が24人いたが、これを取締役が9人、執行役員は12人とする。日本の執行役員や、シャープの執行役員は、役割を聞いても何をやるのかわからない。それを明確にする」などと述べた。
なお、IoTプラットフォームの構築については、現在、シャープ独自の展開を進めているが、「他社との連携が可能になるのであれば、必ずやることになる。今ソフトバンクのファンドにも参加しており、先端企業との連携も可能になる。これは、ソフトバンクとだけ連携するということではなく、さまざまな可能性がある」とした。
また、東芝の半導体事業に対する入札については、「現時点では話ができない。あと1週間待ってほしい」とした。
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