トヨタ自動車に自動運転システム向け人工知能(AI)技術を提供したり、ドイツの自動車部品大手Robert Boschと自動運転システムの共同開発を進めたりと、ここに来て急に脚光を浴びているNVIDIAだが、うっそうと茂った森のなかを自律飛行できるドローンを開発した。GPSの信号に頼らず、カメラでとらえた周囲の画像を解析することで、森の道に沿って自動的に飛べる。
当初NVIDIAは、このドローンを森林内で行方不明者の捜索や倒木の発見に活用する目的で開発に着手したという。ただし、GPSの電波が届かなかったり、GPSによる測位精度が低かったりする環境で正確な自律飛行が可能になるため、高層ビルに挟まれた都市部、ビルの内部などでも役立つとしている。
NVIDIAは、市販されている一般的なドローンに、周囲の画像を取得する2台のカメラと、深層学習(ディープラーニング)による画像解析を担う組み込みAIスーパーコンピュータ「NVIDIA Jetson TX1」を搭載。そして、あらかじめ撮影しておいた森の道を移動するビデオを学習させておいた。これにより、GPSの電波が届かず、地図のない森のなかを、障害物を避けつつ、道の中央を安定して自律飛行させることに成功した。
開発メンバーの1人である、NVIDIAテクニカルリードのNikolai Smolyanskiy氏は、「試験用の環境に森を選んだのは、おそらくナビゲーションがもっとも難しい場所だからだ。ディープラーニングでこのような環境のナビができれば、どんな場所でもナビ可能だろう」と話す。
NVIDIAによると、このドローン用ナビゲーション技術はまだ実験段階。将来は、火災などで損傷したビル内から生存者を見つけ出すことや、トンネル内に敷設された線路の点検、倉庫や屋内店舗での在庫確認、海底ケーブルの検査などに活用可能だという。さらに、地図やビル内の見取り図を入力されただけで、指定された2点間を、障害物を自力で避けながら自動的に移動するロボットも実現できると見込む。
今後NVIDIAは、画像情報だけでナビゲーション可能なロボットをNVIDIA以外も開発できるようにするため、Jetson TX1および「Jetson TX2」用のソフトウェアをダウンロード提供する計画。
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