KDDIと住友商事は6月19日、ミャンマー国営郵便・電気通信事業体(MPT)と共同で運営しているミャンマーの通信事業において、新たに取得した1.8GHz帯を活用した高速通信サービス「LTE+」を5月末より提供し、9月末までに全国約30都市に拡大することを発表した。
KDDIは2014年に住友商事と合弁会社を設立し、MPTと共同で事業を運営する形でミャンマー市場に参入。KDDIの理事 グローバル事業本部 グローバルコンシューマービジネス本部 本部長である岡部浩一氏によると、共同運営を開始した当初は人口カバー率が49%で、ネットワークの容量が不足しSIMも抽選で発行しなければならないなどの問題を抱えていたという。
しかし、その後インフラの整備を急加速したことにより、現在は容量を拡大しSIMをいつでも購入できるようになったほか、人口カバー率も96%にまで拡大させたという。さらに、MPTでは共同運営以降、ロゴや店舗の改善による顧客体験価値向上や、顧客のニーズに合わせた料金プランやサービスの改善、さらには共同運営以前は紙でなされていた経理処理をシステム化して業務全体を改善するなど、さまざまな改善策を実施してきたという。
そうした結果、MPTは加入者数を共同運営開始当初の4倍となる2300万契約にまで拡大。ミャンマー市場はMPTの他にも2社が参入しており、携帯電話の普及率は2017年3月時点では101.3%に達するなど競争環境は激化しているという。そうした中でもMPTは外部機関の調査で、ブランドや通信速度などの面で高い評価を受けていると岡部氏は話す。
その一方で、携帯電話の急速な普及でデータ通信の利用が急増。データ通信量は共同運営開始直後と比べて約10倍にまで伸びているそうで、岡部氏も「参入当初はここまでいくかというと、どうかと思った」程の伸びを示しているという。そうしたデータ通信の利用の高まりに応えるべく、MPTではLTEの本格サービス展開を開始したとのこと。
MPTでは2016年10月より、2.1GHz帯を5MHz分用いてLTEサービスを提供しているそうだが、こちらは帯域幅の都合上、通信速度が理論値で下り最大37.5Mbpsに限られるため、あまり積極的には展開していなかったという。しかし、新たに10MHz幅の1.8GHz帯の電波が割り当てられたことを受け、MPTでは5月30日よりヤンゴン、マンダレー、ネピドーの3都市で、この帯域を用いたLTEによる高速通信サービスLTE+の提供を開始したという。
岡部氏によると、LTE+の名称はLTEの通信方式を用いているという意味だけでなく、「Largest network」「Technology-advanced」「Entertainment +」という、3つの特長を表した略称でもあるという。最初のLargest networkはエリアカバーの広さで、3Gによる広いカバーエリアと、LTEによる高速通信が利用できることを表しているという。LTEのエリアも9月末までには30を超える地域にまで広げるなど、今後積極的に拡大していく方針とのことだ。
2つ目の「Technology-advanced」は高速通信を実現する技術を指す。帯域幅が広い1.8GHz帯を用いるのに加え、基地局と端末の双方に4本のアンテナを搭載し、同時に送受信することで高速化するアンテナ技術「4×4 MIMO」をミャンマーで初めて導入することにより、理論値で下り最大150Mbpsの通信速度を実現するとのこと。岡部氏は「あくまで通信環境のよい場所で実施した結果」としながらも、現地での速度調査では下り110Mbps以上、上り25Mbps以上の通信速度を確認したとしている。
そして3つ目の「Entertainment +」は、人気のサービスを利用しやすくするための取り組みになる。5月のMPTのデータ通信実績では、FacebookなどのSNSの通信トラフィックが半分以上を占めており、次いで動画サービスが伸びてきているという。
そこでMPTでは、通常のデータ通信容量に加え、SNSと動画を使った時だけ利用できるデータ通信容量をセットにしたパッケージプラン「ハッピーデータコンボ」を、6月20日より提供するとしている。ちなみに対象となるサービスは、FacebookとViber、YouTube、そしてミャンマーのテレビ番組が視聴できる「Pyone Play」になるという。
MPTでは、これら3つの特徴を打ち出すことでLTE+の利用を広げ、ユーザー獲得を進めていきたい考えのようだ。ミャンマーは平均年齢が28.6歳と若いことから、「今後もデータ通信の利用は期待ができる」と岡部氏は話し、LTE+の展開に大きな期待を寄せた。
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