ハードウェアは完成していて、いまはソフトウェアの精度を高めているところです。いま私の執務室にはWAVEがゴロゴロいますよ(笑)。メーカーでいうと我々なのですが、製造パートナーについては公開していません。
――販売方法についても教えてください。WAVEの先行モデルは数量限定なのでしょうか。
販路については、「LINEモバイル」と同じで、最初はオンラインからスタートします。当然その次はオフライン(実店舗)になると思いますが、そこはオンラインでの販売状況を見ながら決めていきます。台数については、いきなり100万台といわれても我々も対応できませんので、すでに生産に入っている分と、追加でどこまでできるかというところですね。
――トヨタやファミリーマートとの連携についても教えてください。
トヨタさんとの取り組みについて、クルマとAIと聞くと自動運転を思い浮かべるかと思いますが、我々が自動運転をサポートするわけではありません。自動運転はトヨタさんがご自身でいろいろとやられていますので、我々はSDL(スマートデバイスリンク)という、コネクテッドカー向けのオープンプラットフォームに対して、Clovaをつなぎ込ませていただいて、その中でクルマの安全安心も含めて、ボイスコントロールなどをさせていただきます。現時点でお話できることはカンファレンスですべて話してしまいましたので、これ以上はお話できません。ただ、トヨタさんとしてもかなり強い思いを持ってやってくださっています。
ファミマさんについては、我々の持っているClovaの頭脳にあたる「Clova Brain」のインターフェースの技術を、次世代店舗に応用していくという考え方です。音声認識もそうですし、店舗のフロアビジョンを使ったものも含めて、それらをどうやって店舗に入れ込んでいくのか。具体的なことはこれから詰めていくところですね。
――アマゾンやグーグル、アップルなど強力なライバルとの戦いになりますが、LINEのAIや音声デバイスが持つ強みは。過去のインタビューでは、LINEが得意とする「コミュニケーション」、そしてグループのNAVERが培ってきた「検索」の2つを挙げていました。
コミュニケーションと検索、さらに我々の持つIDとプラットフォームです。LINEのプラットフォームだけでなく、チャットボットやビジネスアカウントのプラットフォームもありますし、LINE IDによるログインの仕組みもすでに整備されています。こうした多種多様なビッグデータをClovaと連携させられることが我々の強みかと思います。
また、数多くのパートナーがいることも強みです。オンライン事業者であれば、ある種自分たちのやり方だけでパートナーを広げることができますが、トヨタさんやファミマさんなどオフラインのパートナーは少し違いますよね。たとえば、「LINE Pay」で1年近く時間をかけたのも、銀行と接続するところを重要視したからです。いまは30行くらいとつながっていますので、そこはストロングポイントになります。オフラインという世界には参入障壁があって、なかなかすぐには浸透しない。それを1つ1つクリアしているところが他社との違いだと思いますし、強みだと思います。
――逆にLINEの弱みはどこになるのでしょう。
英語ですね。なので、そこでは勝負せず日本語と韓国語で戦っていく。まさに選択と集中で、広くやるよりは1つのところでグッとやりきったほうがいいだろうと考えています。
――今後のAI事業のロードマップを教えて下さい。
ようやく皆さんに最初のプロダクトを触っていただけますので、2017年はいろいろなもののプロトタイプが出てくる年になるかなと。そして、さまざまな形でパートナーのプロダクトが一気に出てくるのが2018年だと思います。そこから2019年くらいまでに、多くのご家庭にこのスマートデバイスが必須になる環境を作っていきたいですね。ただし、計画通り進めるというよりは、できるだけ前倒しで進めたいですね。
――続いて、LINEアプリの大幅刷新について教えてください。2月に「ニュースタブ」を新設してからわずか4カ月で、このタブを「ポータルタブ」へと刷新することを発表しましたが、その理由は。
我々が進めている「スマートポータル戦略」というのは、LINEをポータルにしていくことなんですが、これまでユーザーの皆さんにそれをお伝えするゲートウェイになるものがなかったんですね。そのための第1ステップとしてニュースタブを作りましたが、これが皆さんに受け入れてもらえたので、第2ステップということでポータルタブにすると。「LINE NEWS」では決して報道機関が発信しているものだけをニュースと考えていません。基本的に人々が知りたいものはすべてニュースです、コンテンツですという定義をしているので、自然な形でニュースからポータルへシフトできるだろうと。
ポータルタブでは、上部のパネルに天気や交通情報などが表示され、下部にニュースやコンテンツなどが並びます。ただ、単純に各サービスへの導線を設けるだけでは違うよねと。ユーザーにとって意味のあるものにしないといけないので、動画やマンガ、音楽、ショッピングなどをコンテンツ化していく。そこで滞在したいと思うような、面白いものにしていくことが我々のチャレンジですね。
――LINEのファミリーサービスなどにアクセスできる「モアタブ」も「ウォレットタブ」へと刷新するのはなぜでしょうか。
これまでモアタブには、設定メニューや各サービスへの導線など、いろいろなものがすべて入っていたのですが、ここは整理をしないといけないとずっと思っていました。その中でポータルタブを設けて、そのほかのタブの役割をどうするべきかと考えた時に、おかげさまでLINE Payが伸びていますので、ここは決済やポイント、ショップカードなどを中心にした、購買行動をつかさどるお財布のようなタブにした方がいいのではないかと考えました。
――では、モアタブの扱いは今後どうなるのでしょう。また、それぞれのタブが実装される時期は。
モアタブ内のコンテンツについては、ウォレットタブで持つものと、ポータルタブで持つものにそれぞれ分けていくことになりますね。タブはまさに開発中でして、実装は夏以降になります。その時に、すべてのパーツが揃っているかは分かりませんが、恐らく同時に実装されると思います。
――フードデリバリーサービス「LINE デリマ」とショッピングサービス「LINE ショッピング」についても教えてください。LINEでは過去に、CtoCフリマアプリ「LINE MALL」やフードデリバリーサービス「LINE WOW」を展開して撤退しています。再挑戦ということになりますが勝算は。
まず、フードデリバリーから説明すると、LINE WOWは渋谷区など都心から提供を開始して、多くの方にご注文いただき、リピーターも増えていたのですが、1つ問題がありました。それは、局所的なサービスはどうしてもお店を増やすのに時間がかかることです。LINEというサービスは全国で使っていただいていますので、我々の成長スピードとユーザーニーズに応えきれないということを考えると、このまま小さく時間をかけてやっていくのはよくないんじゃないかと。フードデリバリーやリアルタイムなオンデマンドのニーズがあること、またLINE上から頼んでくださることは分かりました。ただ、これを全国でやらないといけない。そして加盟店も持たないといけないと強く思いまして、LINE WOWは閉じました。
ただ、WOWを閉じる時から今のデリマの姿が見えていまして、その適切なパートナーは当然、出前館でした。宅配デリバリーで圧倒的ナンバーワンですので、彼らの筆頭株主になりパートナーシップを進めていく中で、どのようなデリバリー体験がいいのかと考えて生まれたのがLINE デリマです。また、出前館はピザや寿司など、そもそも加盟店側にデリバリーの機能があるものをメインとしてきましたが、それだけだと個店には対応できません。でも、美味しい個店がたくさんあるじゃないかということで始めるのが、シェアリングデリバリーです。出前館と朝日新聞の配達所であるASAが組んで届けるというもので、LINEもバックアップしながらカバレッジを広げようと思っています。そして第2ステップでは、フードに加えて生鮮食品や日用品、薬などもオンデマンドで届けたいと思っています。
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