音声スピーカ「WAVE」のお披露目は合格点--LINE舛田氏に聞くAI戦略やEC再挑戦 - (page 3)

 LINE ショッピングについては、過去にLINE MALLやフラッシュセールなどをやらせていただいて、こちらも伸びてはいたものの、LINEが期待する伸び方ではなく、戦い方でも満足できなかったというのは正直あります。ただ、当時はリソースを一気にかけられるタイミングではなかったので、ほかのところに集中しようということで閉じることにしました。

 それからもずっと、お店や小売りとLINEはどういう関係であるべきかを考えていました。たとえば、京都のお茶屋さんなど、LINE@をうまく使って売上げが何%も上がりましたという事例がどんどん出てきていたので、我々としてもう一度コマースという領域で何ができるのか整理してみようと。そうすると、期待されているのは本当の意味でのゲートウェイなのではないかと思ったのです。

 社会背景でいうと、これまで巨大モールの中でコマースの皆さんは頑張ってきたけれど、出店する店舗が増えすぎて、集客が難しくなったので広告商品を買わないといけない。そして広告を出して集客したけれど、その結果顧客のデータは自分のところにはあまり残らない。商品が売れるか売れないかも、ポイントをどれだけ多くつけるかで決まってくる。それは、あまり自決的ではないコマース環境だと思うんです。

「LINE ショッピング」
「LINE ショッピング」

 そのため、最近は皆さんが自前でオンラインショップを持ち始めていますが、そこには何らかの形で優位性がなければいけない。では、そこは我々が担えるんじゃないかということで、LINE ショッピングというゲートウェイサービスをやってみようと。ユーザーにとっては、決まったオンラインショップで水や服を買うという行動は変わりません。ただ、我々のゲートウェイを通っていただけると得をする。たとえば、「LINEポイント」も貯まるし、購入先のショップポイントも貯まるので二重にお得です。

 また、お店からするとユーザーはLINE経由で来てくれるし、決済は自分たち側でしてもらえるので、顧客情報は自社で持つことができる。なおかつ、自社の公式LINEアカウントもフォローしてもらえる構造になっていますので、一度来てくれたユーザーが常連客になる確率が非常に高くなります。なので、モールとLINE ショッピングは考え方がだいぶ違いますね。

――LINEユーザーからすると、LINE ショッピング経由でアクセスしたオンラインショップでの支払いにLINE Payを使いたいのではないでしょうか。

 現状はLINE Payに対応する計画はありません。ただ、ユーザーの皆さんの動きと店舗の反応をみながら、たとえばLINEポイントで決済を可能にするなど、よりシームレスになるような取り組みはできればと考えています。

――LINE WOWやLINE MALLでは、限られた一部のユーザーに特別な体験を提供することを重視していましたが、LINE デリマやLINE ショッピングでは、より多くのユーザーやパートナーにLINEというプラットフォームを開放する印象を受けます。

 その認識で正しいと思います。これまでは我々自身でグッと作り続けてきましたが、もう少し我々のプラットフォームを広げて、利用していただきましょうというのがデリマやショッピングですね。さまざまなものとつながっていくことに価値がある。それが我々の強さになるんだという考え方で、いまはどんどん広げていく思想でやっています。

LINEで行政サービスの申請が可能に

――内閣府と連携し、LINEと「マイナポータル」を組み合わせた子育て関連サービスを提供することを発表しました。どのような経緯で実現したのでしょう。

LINEと「マイナポータル」が連携
LINEと「マイナポータル」が連携

 もともと我々は、首相官邸や地方自治体などに公式アカウントをご利用いただいていました。ただ、それはメルマガのような役割だったので、もう少し深い取り組みをしましょうということで、次に渋谷区や福岡市とパートナーシップを組みました。そこで非常にいい成果が出ていて、特に福岡市では、市民とのつながりで最もLINEが活用されていると聞いています。

 その流れで、さらに我々のものをお使いいただけないかと行政の方とお話をする中で、マイナポータルと連携することになりました。子育ての支援は政策においても重要ですが、どうやってこの悩みを持っている人やサポートが必要な人に届けるのか。そう考えた時に、そうした人に最もリーチしていたのが私たちだったということですね。

――子育て支援以外では、どのような領域で連携するのでしょうか。

 我々としては、いろいろな可能性を考えていきたいと思っています。これはマイナポータルとは関係ないお話ですが、いま諸外国をみると、スマートフォンからいろいろな行政の手続きが当たり前にできるようになってきています。一方で、日本はそこが遅れているという課題が間違いなく存在しますので、そこに対して我々が何かしらソリューションとして提示できるのであれば素晴らしいことだと思っています。手続きをするたびに、役所に書類をもらいにいくのを繰り返すのは不毛だなと。そういうことを簡単にして、その時間をほかのことに使ってもらった方が当然いいと思いますので、我々がサポートできるのであればどんどんやりたいです。ただ、そのためには安心、安全、信頼、責任なども求められると思います。

――行政とLINEの連携について、個人情報は安全なのかといったネガティブな意見もあります。

 そこはすごくシンプルでして、LINEが提供するコネクトの設計上、我々にはつながり先のデータが送られてこない仕様になっていますので、私ども経由でセキュリティのリスクが発生することはありえません。それに、マイナポータルとつながるだけでマイナンバー自体とつながるわけではありませんので、安心してご利用いただければと思います。

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