10年後のIT業界で“主役”になるのは--グリー田中氏やDeNA原田氏が予想 - (page 2)

 原田氏が挙げたのは「ボイスインターフェース」、つまり昨今注目を集める音声認識スピーカーなどだ。「人間のリテラシーはそんなに早いスピードで変わらない。本質はリテラシーが低い人に対して、いかに裾野を広げられるか。昔僕らは『PCの方がキーボード入力できて楽じゃん』と思ったけれど、実際にはモバイルの方が利用者が多くなった。ハイリテラシーな人は、ボイスよりタップの方が楽だと思うかもしれないが、過去の法則に当てはめるとボイスは相当広がるのではないか」(原田氏)。

 千葉氏が挙げたのはやはり「ドローン」だ。同氏は、現在飛行しているドローンはラジコンの域を超えていないと話し、5年後には完全自立飛行のドローンが日々、我々の頭上を飛んでデータを収集したり、ものを運んだりする未来が来ると予想。また、農業や測量など特にBtoB領域でドローンが活躍すると話し、「ここで日本が全力を出せば世界でも戦える」と鼓舞した。ただし、バッテリ持続時間や自動運転技術の進化など、ドローンに関する課題は山積みであることから、今後は基礎技術を研究するマッドサイエンティストを応援したいとしている。

アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏
アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏

 一方の新氏は、新デバイスの登場に過度な期待はしていない。これまでの10年のコンテンツ消費について触れ、音楽からゲームや動画に、メールからSNSにツールはリッチ化し、リアルタイム性も増したものの、人々の行動自体に大きな変化は起きていないと指摘。10年後も、新たなデバイスにはシフトせず、既存のスマートフォンに全天球カメラやVR機能などが搭載され、高機能化するのではないかと予想した。

 田中氏は、あえてデバイスではなく「AI(人工知能)」を挙げ、ディープラーニングによって人々が常識だと思ってきたことが根底から覆される日がくるのではないかと語る。「(囲碁AIの)アルファ碁同士の棋譜が公開されたときに、プロ棋士たちはその戦いをみて内容を全く理解できなかった。人々は長い年月で英知に達すると信じてきたが、全然違ったらしいということが分かった」(田中氏)。

 そこから議論は「今後2~3年でAI領域で成功しそうなプロダクトはあるか」という方向へ。原田氏は過去に何度かAIブームが訪れては消えてきたが、今回はソフトウェアが自律化したことが従来との大きな違いだと説明。その上で、「人間が想像してコントロールするより、AIを作った本人も意図しないようなことが、ある種事故のようにして起こると、良くも悪くも驚異的だなと思う」と語る。

The Ryokan Tokyo代表取締役CEOの千葉功太郎氏
The Ryokan Tokyo代表取締役CEOの千葉功太郎氏

 千葉氏は、自身が参画するリアルテックファンドを通じて、さまざまな研究者と付き合う中で、ユニークなAIチップの企業と出会ったエピソードを紹介。「船にチップを乗せて30秒間揺れると、次の7秒間の揺れを予測し、それがかなり当たる。リアルタイムにインプットしてアウトプットするスピードとロジックが素晴らしい。その代わり百次元までしか処理できないので、応用範囲は低い。そういう基礎技術の会社に投資し、そこから出会いサービスやりたい。チップで大量のインターネット上のマッチングデータと自分のDNAデータを入れれば、世界最高レベルのマッチングサービスを作れるのでは」(千葉氏)。

 セッション終盤では、田中氏が投資のタイミングを見逃して後悔したという仮想通貨のビットコインやブロックチェーンにも話が及んだ。

 千葉氏は、仮想通貨について「苦手」と前置きしながらも、「国家の仕事は、法律と通貨を発行すること。ブロックチェーンの存在は通貨を発行する機能を根底から覆す可能性がある。この前ビットコインは暴落したが、あの時にすごいなと思ったのは追い証(追加保証金)がないこと。なぜ、どこの国もビットコインに本気で税金をかけないのかといえば、税金をかけたら負けだから」との見方を示す。

 また鈴木氏は、「僕は10年以内にもう1回揺り戻しがあると思う。結局、国家のパワーは強くて、何かが起きたら一気に潰しにくる。 そうした揺り戻しがないように成長するといい」と語り、セッションを締めくくった。

スマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏
スマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏

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