IT企業を中心とする経営者や経営幹部が一堂に会し、経営や業界の展望について語る、年2回の招待制カンファレンス「Infinity Ventures Summit 2017 Spring Kobe」(IVS)が、6月6~7日の2日間にわたり兵庫県神戸市で開催された。2007年の初開催から10年の節目となる今回のオープニングセッションでは、IT業界のこれまでとこれからの10年について、業界をリードしてきた経営者らが語り合った。
登壇者は、gumi代表取締役社長の國光宏尚氏、アイ・マーキュリーキャピタル代表取締役社長の新和博氏、グリー代表取締役会長 兼 社長の田中良和氏、The Ryokan Tokyo代表取締役CEOで投資家の千葉功太郎氏、ディー・エヌ・エー(DeNA)執行役員の原田明典氏の5名。モデレーターはスマートニュース代表取締役会長 共同CEOの鈴木健氏が務めた。まず登壇者に向けられた質問が、この10年間で最も印象に残っている出来事についてだ。
最初に答えたDeNAの原田氏は、NTTドコモでポータル事業やベンチャーとの協業に携わった後、ミクシイのCOOとしてSNS「mixi」のモバイル化やオープン化を進めてきた人物だ。そんな原田氏が挙げたのは“アプリへの回帰”だった。ドコモに勤めていた際に、フィーチャーフォン向けにアプリを広めようとしたが当時はまったく流行らなかったため、「スマホの時代に変わりこれからはウェブだ」と考えたそうだが、タッチパネルとの相性の良さから最終的にはアプリが主流になった。そのため「過去のトレンドを踏襲しすぎると読み違える」と反省したという。
続いてThe Ryokan Tokyoの千葉氏は、フィーチャーフォン時代にさまざまなビジネスを学んだ経験から、2016年11月に発表されたドコモのiモードケータイの出荷終了を挙げた。そして、もう一つがドローンだ。2015年3月にトイドローンと出会ったことがきっかけでドローンに可能性を感じた千葉氏は、共同創業者として副社長も務めたコロプラを2016年に退職。2017年6月に日本初のドローンに特化した投資ファンド「Drone Fund」を立ち上げている。
アイ・マーキュリーキャピタルの新氏は、フィーチャーフォンとスマートフォンの出荷台数の逆転を挙げた。もともとドコモでiモードのエコシステムの活性化などに従事していた新氏は、「ドコモに入ってエコシステムの頂点にいるつもりになって、一生ボーっとしていても勝てるんじゃないかと思っていたが、そこからスマホがきて、ハードメーカーやグーグルなどのOS会社がトップになった」と、当時の衝撃を振り返った。また、現在小学3年生の娘が、将来の夢にYouTuberを挙げたことも印象的だと語った。
グリーの田中氏は、近年高騰を続けるビットコインなどの仮想通貨に先行投資しなかったことを後悔していると話した。「最もチャンスがあった瞬間をどスルーした。インターネット業界の先駆者としてイノベーションを発見する力があると思っていたが見逃した。これがこの10年で一番の失敗」(田中氏)。またgumiの國光氏は、ソーシャルゲームプラットフォームの「Mobage」と「GREE」の競争を挙げ、その頃からIT企業の資金調達額が増え始め、結果的に優秀な人材が業界に集まるきっかけとなったと振り返った。
続いて鈴木氏から出された議題は、10年後の2027年に主流となっているデバイスは何かということ。國光氏は「MR(複合現実)デバイス」を挙げる。「どう考えても、目とインターネットが直接つながった方が、Uberの呼び出しが簡単になり、レストランの情報共有も遥かによくなる。これは自然の流れ」(國光氏)。
また、MRヘッドセット「HoloLens(ホロレンズ)」を手がけるマイクロソフトが提供するMRプラットフォーム「Windows Mixed Reality」に対応したデバイスが、ASUSやDellなどから次々と発表されていることから、早いタイミングでMRデバイスは低価格で手に入るようになるとコメント。ただし、短期的にはMRデバイスのみを利用するのではなく、アップルのBluetoothイヤホン「AirPods」のように、スマートフォンと連動したデバイスが普及していくのではないかと予想した。
その上で國光氏がキラーコンテンツになりうるものとして挙げたのが「コミュニケーション」と「ゲーム」の2つだ。「ロケーションに紐付いた人の顔やアバターを作れるようになるだろう。たとえば、MRグラスで学校の教室やレストランに関する投稿が、目の前にみえる。街全体がドキドキするようなコミュニケーションの場になる。Pokemon GOを超えるARゲームも生まれるのでは」(國光氏)。
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