サイバーエージェントとテレビ朝日が共同で展開しているインターネットテレビ局「AbemaTV」(アベマTV)。2016年4月11日の本開局から1年が経過。動画配信サービスとしての存在感を増している。
AbemaTVは、「無料で楽しめるインターネットテレビ局」とうたう動画配信サービス。会員登録不要でテレビのように編成された番組をスマートフォンやPC、タブレットなどさまざまなデバイスで視聴することができる。本開局以降、利用者が右肩上がりで増加し、ダウンロード数は5月7日時点で1700万を突破している。
独自の生放送番組やニュースをはじめ、音楽や麻雀などといったさまざまなジャンルに特化したチャンネルを用意しているのも特徴。そのなかでも、開局当初から人気が高いのがアニメチャンネルだ。
最新アニメの見逃し配信をはじめ、話題の作品から懐かしい作品まで幅広いラインアップで、現在は5チャンネルで展開。初期段階から視聴ランキングの上位にアニメ作品が名を連ね続けているほか、一挙放送の人気も高い。最近では、キャスト陣が登場する特別番組や、ネットにおける独占配信も実施し、アニメファンに対しての存在感を高めている。
開局当初からアニメチャンネルを担当しているAbemaTV編成制作局 編成3部の部長を務める椛嶋麻菜美氏と、同チャンネルプロデューサーを務める水谷誠也氏の2人に、準備段階からのエピソードや話題になった出来事などを振り返りつつ、AbemaTVのアニメチャンネルが支持を受けた理由、そして今後について聞いた。
--AbemaTV、そしてアニメチャンネルに関わるようになった経緯を教えてください。
椛嶋氏:以前はCyberZでスマホ向けの広告事業などを担当していて、AbemaTVのプロジェクトが立ち上がった時に参加しました。AbemaTVでアニメを配信することになったのは、さまざまな番組の構想があるなかで、とりあえず押さえておくべきジャンルであろうという判断があったからです。ただ、当時のプロジェクトメンバーではアニメの担当というものがいなかったので、私が担当することになりました。
ゲームはすごく好きで遊んでいたのですけど、アニメに関してはそこまでアクティブには見ていなくて、疎かったです。なので、さまざまな作品を見てひたすら勉強しました。今はどっぷりとアニメにつかっています(笑)。
水谷氏:もともとテレビ朝日に在籍していまして、深夜アニメやキッズアニメのビジネスに携わっていました。サイバーエージェントには人材交流という形で出向してきて、スマホゲームのプランナーとして「ガールフレンド(仮)」や「ガールフレンド(♪)」など携わってました。AbemaTVのプロジェクトが立ち上がったあと、開局に向けて社内でもさまざまな人材を集めているなかで、私にもお声がかかったのがきっかけで、開局の1、2カ月ぐらい前にアニメ担当という形で参加しました。
--本開局時点でアニメは4チャンネルが用意されましたが、複数チャンネルを用意した理由は。
椛嶋氏:アニメとひとことで言っても、ジャンルのくくり方も非常に多く、作品の対象としている年齢層もさまざまです。AbemaTVとしてはあまりコアユーザーだけを狙うのではなく、一般の方も楽しめるラインアップもそろえることが大切だと考えると、いろんなジャンルを網羅できたほうがいいと。そのため、狙うターゲットにあわせた切り口でチャンネルを用意しました。
「アニメ24」がメジャーな作品を中心に据えたラインアップで、「深夜アニメ」はコアユーザー向け、「なつかしアニメ」は30~40代の方が楽しめるような1980~1990年代の作品が中心、「家族アニメ」はファミリー向けで「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」がラインアップできるようにという狙いもあって作りました。
水谷氏:やはりアニメはひとくくりにできるジャンルではありません。私が加わったときは、すでにチャンネルを分けて用意することは決まっていて、その通りだろうと。そのなかで、チャンネルごとの色をどう出していくか、それに適した作品をどう用意するかを考えて動いていました。
--初期段階では約20チャンネルが展開されていましたが、そのなかで4チャンネルを占めるとなると、多いようにも思います。それに対しての意見はありましたか。
椛嶋氏:特にそういう意見はありませんでした。複数チャンネルの狙いはありましたが、4チャンネルに増やすことに対する深い意図はなかったのが正直なところです。当初からアニメチャンネルを複数展開する計画をしていましたし、「アニメは複数チャンネルがすべて24時間編成されている状態をつくる」という話を、藤田(サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏)とも話していました。
--本開局後、アニメの人気が高い状態となりました。
椛嶋氏:初期の段階は総じて、視聴者数や視聴時間もアニメが5割近くを占めるという状況になっていました。コメントの勢いや量も、ほかのチャンネルから比べると明らかに多かったですし、初めて視聴者数が100万を突破したのもアニメでした。コンテンツとして持っている強さや勢い、マス化するポテンシャルを秘めていることを感じました。
水谷氏:私も予想をはるかに超えるぐらいにアニメが見られていると思いました。アニメのネット配信自体はもう珍しくないですし、月額制などの見放題で、任意のタイミングで視聴できるサービスがすでにいくつもあります。その状態でアニメに人が集まるかは読めなかったのですが、実際に運営を開始したら、放送型の配信形態でもたくさんの方に見ていただいて、思っていた以上にアニメファンの熱量を感じました。
--作品の権利元へ打診や交渉もされたかと思いますが、そのときの反応はいかがでしたか。
椛嶋氏:動画配信事業として見ると最後発といっていい状態ですし、お話をさせていただいていたタイミングでは、ほかの類似サービスでもプロモーションを強化していました。なので「大丈夫なのですか?勝算はあるのですか?」と、逆に心配されるぐらいのご意見をいただいたこともありました。ただAbemaTVは、編成された放送型の番組配信とタイムシフトによるハイブリッドの映像配信サービスというところで、それは国内だけではなく海外でも今までになかったものです。なので、お話させていただいたコンテンツホルダーでの方のなかには、新しい挑戦だから一度やってみましょうという反応もいただけるようになりました。
水谷氏:今でこそAbemaTVがどういうものかを見せて説明できる状態ですが、サービスローンチ前の段階では、放送型の配信サービスについてこちらから説明してもなかなかイメージしにくく、みなさん「?」という反応が多かったですね。
--運営しているAbemaTVはテレビ朝日との合弁会社ということで、話がしやすかったということはあったのでしょうか。
水谷氏:それはなかったといっていいです。テレビ朝日が権利を持っているため話が進めやすかった作品もあるにはありましたが、ごくごく一部です。権利者窓口となる方を数多く知っていたわけではないですし、本当にゼロベースといっていい状態から連絡を取って進めました。アニメは製作委員会方式が主流ですから、それこそ組成している企業一覧を見て、主幹だと思われる会社の代表電話にかけるといったことからやりました。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス