サイバーエージェントとテレビ朝日がタッグを組んで生み出したインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマTV)」が、2016年4月11日の開局から間もなく1年を迎えようとしている。アプリのダウンロード数は3月時点で1500万を突破し、月間アクティブユーザー数は800~900万人という高さを誇るという。
「想定以上のスタートダッシュがきれた。広告モデルなので有料課金のサービスには当然負けられないが、外部の調査結果などからも断トツでAbemaTVが視聴されているという状態を作ることができた」――サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏は、1年にわたり力を注いできたAbemaTVの現状をこう評価する。
AbemaTVは、アプリをダウンロードするだけで、テレビのように次々とチャンネルを変えながら番組を視聴できるサービスで、会員登録は必要ない。独自の生放送番組やニュース、アニメ、音楽、スポーツ、ペットなどのほか、麻雀や将棋、釣りなど約30チャンネルを無料で配信。また、約70のオリジナルレギュラー番組を放送しており、これまでに放送した累計番組数は17万を超えるという。
視聴者の年齢層は同社のターゲットでもある10~20代が中心で、外出先よりも就寝前や週末に自宅で視聴する人が多いそうだ。視聴されるチャンネルは、当初はアニメの比率が高かったが、現在は3割ほどに落ち着いており、幅広いチャンネルの動画が視聴されているという。
直近では、3月4日にお笑いコンビ「極楽とんぼ」の加藤浩次さんと山本圭壱さんが約10年ぶりのコンビ復活後、テレビ初冠番組として24時間生放送に挑戦した「極楽とんぼ『KAKERU TV』~24時間AbemaTV生JACK~」が過去最高となる360万視聴を超え、大きな反響を呼んだ。また、オリジナル番組の「オオカミくんには騙されない?」も、10代の女性を中心に高い支持を集めた。
機能面では、2016年末にバックグラウンド再生に対応。アプリを立ち上げながら別のアプリを利用したり、スマートフォンを閉じた状態でも、音声だけで番組を楽しめるようになった。また、これまでは横画面でしか視聴できなかったが、4月3日から縦画面での視聴にも対応。これにより、画面上で同じチャンネルの放送予定番組を確認できるようになったほか、番組へのコメント投稿やコメント閲覧、番組表も確認しやすくなった。
「縦画面はとても好評で、逆に何でやらなかったのかと言われるかもしれないが、実は散々縦のモックも作っていて、カッコいいデザインにならなかったので横にした。1年が経ち、コンテンツが出そろうことで縦画面でも見栄えがよくなった。“手癖”のようにアプリを立ち上げてもらうには、スマホを横に倒す挙動はハードルになると感じ、縦対応を決断した。我々にとっては、サービスを一から作り直すくらい大変だった」(藤田氏)。
一方で、スマートデバイスやPCに加えて、「Google Cast」や「Amazon Fire TVシリーズ」などテレビデバイスへの対応も強化してきたが、こちらは同社が期待するほど視聴者増につながっていないという。「スマートテレビ化するデバイス自体があまり普及していない。一度使うと戻れないくらい便利だが、世の中のリテラシーが追いついていない印象」(藤田氏)。
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