福岡銀行があえて東京にコワーキングスペースを作った狙い

阿久津良和 山川晶之 (編集部)2017年06月07日 11時30分
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 福岡銀行や熊本銀行、親和銀行などを傘下に持つふくおかフィナンシャルグループは、2017年4月で設立10周年を迎える。その記念事業の1つとして、東京・八重洲にコワーキングスペースやイベントスペース、ミーティングスペースなど複数の役割を併せ持つ空間「Diagonal Run Tokyo(ダイアゴナル ラン トウキョウ)」を開設した。

 一見すると“なぜ銀行がコワーキングスペースを?”という疑問が浮かんでくる。福岡銀行営業戦略部 iBank事業室 室長 兼 iBankマーケティング 代表取締役の永吉健一氏は「状況やタイミングが奇跡的に一致して開設に至った」と語る。


福岡銀行営業戦略部 iBank事業室 室長 兼 iBankマーケティング 代表取締役の永吉健一氏(左)と福岡移住計画主催 兼 スマートデザインアソシエーション 代表取締役の須賀大介氏(右)

 銀行は保守的な性質を備えているため、昨今のITビジネスに適応するスピード感を持つことは難しい。そこで永吉氏はFinTechやITビジネスを行うiBankマーケティングを2016年4月に設立した。社内ベンチャー的存在の同社だが、銀行の中では気付けなかった足りない部分に次々と浮き彫りになったと同氏は語る。例えばデジタルトランスフォーメーションによる価値観や仕組みの変容さ、これまでリーチしてこなった顧客が持つ多様性。既存のネットワークでは得られなかった視点やユニークなアイディアなど、数々の気付きを得たそうだ。

 他方で銀行が持つ強みにも改めて気付いたと永吉氏は語る。例えば人脈という観点から見ると、数期にわたる決算書で財務内容を確認し、企業の成長性や能力を測ることには長けているが、技術や新しいアイディアの価値を見抜くのは難しい。だが、多くのスタートアップは財務面が弱いことが多いため、銀行ならではの支援ができると感じたそうだ。

 さらに従来の取引先である個人や法人をつなげる存在にもなれると同氏は強調した。現在、福岡フィナンシャルグループ全体では約22万の法人顧客、約500万人の個人顧客を持っているが、彼らをビジネスパートナーとして、「それぞれの中間をつなげるネットワーク基幹となり、皆が共存共栄できる世界」(永吉氏)を目指すという。

地方銀行が東京にコワーキングスペースを開設した狙い

 では、なぜ東京なのだろうか。そこには誰しもが理解しつつも改善できない一極集中問題が根深く残る。「地方企業でも東京に支店を持つのは一握り。皆、喫茶店などで忙しく商談や打ち合わせしている。そこで東京駅の目の前(八重洲口)に皆が集まって会える・情報を得られる・仕事ができる『場』が大事」(永吉氏)だからこそ、Diagonal Run Tokyo設立に至ったという。同施設の企画開始は2016年10月だがグランドオープンは4月初旬に行うほどスピーディな展開だった。


Diagonal Run Tokyoの「WORK ZONE」。利用者が自由に利用できる場所となる

 その背景には、福岡銀行東京支店がある福岡ビルの4Fを借りていた企業が退出し、ちょうど空きができていた。永吉氏は当時の社長に本企画を提案したところ、とんとん拍子で同施設開設に至ったという。「さまざまなタイミングに合致」(永吉氏)したのは巡り合わせもさることながら、「マッチングの場」という明確な展望があったからではないだろうか。

 Diagonal Run Tokyoという名称は永吉氏のサッカー好きからヒントを得ている。サッカーでは、ピッチ中央からサイドもしくはサイドから中央へと斜め前方に掛け上げり、空いたスペースを活用する戦略を「ダイアゴナルラン」と呼ぶ。このキーワードを元に業界の垣根を超えたオープンイノベーションを横軸、デジタル革新時代に基づいた新規事業を縦軸と捉え、新たなスペースを生み出す動きを意味するという。同施設のロゴマークも日本全国すべての地域から訪れる方を対象にするため、47都道府県を縦線化し、ダイアゴナルランで多くの企業が未来に向けて共創する想いを込めたデザインにした。


Diagonal Run Tokyo入り口にある同施設のロゴマーク

 「ベース」「リンク」「コミュニティ」と3つのコンセプトを内包するDiagonal Run Tokyoは、地方企業やスタートアップの東京進出を目指す前線基地として、フリーオフィスやショーケース、ミーティングスペースを用意。同施設では事業化支援も手がける。

 人と人、地方と東京を“リンク”させる場所として、人材ライブラリを用意して地方へのUIJターン(地方や大都市、中規模都市間での移住)相談、技術ライブラリなどを用意したマッチング業務を用意。そして人や情報の交流からオープンイノベーション創出を目指し、イベントスペースを活用したセミナーやワークショップなども開催する。永吉氏は「(同施設は)単なるシェアオフィスではないため、黙って仕事がしたい方は不向き。訪れた方には話しかけるなどコミュニケーションを取りながらビジネスを広げる場」だと、同施設の役割を説明した。


「FIELD ZONE」は広々としたイベントスペース。サッカーのグラウンドを模した人工芝が植えられている

同じくFIELD ZONEに用意したアウトドアテント。この中でも作業できる
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