大学生が出会い系アプリ「Tinder」で出会う理由 - (page 2)

SNSでの付き合いは情報が筒抜けでやりにくい

 マイナビ学生の窓口調べ(2017年1月)によると、恋人がいるという回答は全体の35.4%で、いないという回答(64.6%)を大きく下回った。いないという学生のうち57.5%は「恋人がほしい」と回答しているが、42.5%は「ほしくない」と答えている。「別のことで忙しいから」「色々と面倒くさいから」などの理由が挙げられていた。

 「大学生で若くて時間もあるのにマッチングアプリなど必要ないのでは」と思う大人世代は多いだろう。確かに大学生にとって、恋愛とSNSは切っても切れない存在だ。SNSは、相手の興味関心を知ったり、自分との共通項を探したり、行動範囲をリサーチしたりなど、親しくなるためのきっかけづくりの際には非常に役に立つ。親しくなっていく上でも、SNS上でのやりとりは欠かせないようだ。ティーン向けファッション誌などでも、「気になる彼のLINEでの落とし方」のようなLINEを使った恋愛テクニック特集も多く組まれている。

 一方、「誰と付き合ってるか周囲に筒抜けだからやりにくい」という声も聞かれる。「誰が誰を好きとかもわかるし、付き合っていることも過去に付き合っていたことも筒抜け。別れたら終わりだなと思うと行動に出づらい」。たとえば、TwitterやLINEのグループ上のやりとりなどは、周囲にも筒抜けになる。Instagramで2人で同じ場所に行っていたことがわかることもある。様々な点から2人が親しいことや付き合っていることは周囲に伝わるという。

 実際に付き合っている時は、カップルで共同垢などを運営したり、プロフィール欄にも付き合っていることを明示することも多い。つまり、別れた後も2人が過去に付き合っていたことは記録されているということだ。黒いアイコンで「別れました」などとなっているカップル共同垢が残っていたり、過去に投稿した写真や書き込みなどが残っていたりする状態だ。一度付き合い始めると周囲の人間関係に影響が大きいため、行動に出るのに勇気が必要だというのだ。

 気にせず普通に付き合っている大学生も多いが、行動に出ない大学生も少なくないようだ。SNS時代、人間関係に縛られている大学生の中には、周囲からの目が気になって交際に発展しづらい面があるのだ。その点、マッチングアプリはゲーム感覚で相手を選んだり、共通の趣味がある人を信頼できる状態で探して出会うことができる。大学生にとってマッチングアプリが一つの選択肢となるのは、ある意味当然の成り行きなのかもしれない。ただし、遊び目的での利用も少なくないようなので、相手をしっかり見極めて使う必要があるだろう。

 

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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