ただし、日本は海外と比べて、まだまだ障がい者の教育機会が保証されていないと近藤氏は話す。日米の初等中等教育家庭において特別支援教育を受けている生徒の数は、米国では13.0%と1割を超えるが日本ではわずか2.9%。また、高等教育へ進学して支援を受けている障がいのある大学生の数も、米国は10.8%だが、日本は0.43%と1%にも満たないという。
また、障害者差別解消法によって不当な差別的な取り扱いが禁止されたことで、国立大学や一部の私立大学で合理的配慮の体制整備が進んでいる一方で、関心の薄い公立学校や私立学校は努力義務であるため、国立学校と意識に差が生まれてしまっているという。さらに、小学校と大学では支援が広がってるものの、中学・高校では限定的であるといった課題が残されているとした。
このほか、アクセシビリティの保障についても法律の制定が求められると近藤氏は話す。「合理的配慮について、(教育機関から)『過重な負担です』と言われたら、障がい学生はアクセシビリティを毎回申し立てないといけない。本来なら潜在的に必要なものであり、環境を整備しないといけないが、法にして義務化しなければ(教育機関は)面倒なので対応しない」(近藤氏)。
近藤氏は、障がい者の雇用についても言及した。日本の雇用形態では、基本的に週に40時間(8時間×5日間)の労働が求められ、職務定義がなく部署移動なども多いことから、「常用雇用の“何でもできる人”であることが暗黙の了解となっており、障がい者は排除される仕組みになっている。大学まで学んだのに就職した瞬間に仕事がない」と指摘する。
一方の企業側も、従業員が50人以上の場合は、障害者雇用促進法において法定雇用率2%の障がい者を雇用する必要があり、障がい者手帳を持つ人を週に30時間以上雇用しなければならない義務が課せられているが、30時間分もの仕事を用意することが難しいという課題を抱えているという。
そこで、近藤氏が提案するのが「超短時間雇用」だ。15分からの短時間で働ける専門的な仕事を切り出して割り当てることで、優秀でありながら長時間働けない障がい者にも活躍の場を設けるというもの。すでに神奈川県川崎市と連携して、川崎市内の企業20数社が試験的にこの雇用形態を取り入れているという。業種もITからイベント関係、ホテルなど幅広いそうだ。
また、インターネットを通じて仕事を依頼するクラウドソーシングとも相性がいいと近藤氏は話す。実際に近藤氏の研究室では、遠隔地にいる障がい者にデータを共有して、障がい者向けオンライン図書館「AccessReading」に関する作業をしてもらうなどしており、「一番遠い人では、北海道の八雲町で入院している人に依頼している」(同氏)とのこと。今後は、障がい者と仕事をマッチングするプラットフォームの整備なども進めるとしている。
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