これらの仕組みを構築したのが同社代表の栗田紘氏だ。大学で情報工学を学び、広告代理店に就職したが、自身でゼロから新たな価値を生み出したいと考え、電動車いす「WHILL」の立ち上げに参画。その後、父親が体を壊したり、知人が糖尿病を患ったりした経験から“健康”に対して問題意識を持ち、食で世の中の人々の健康に貢献したいという思いから、seakを創業したのだという。
サービスを開始する前に、自身も農家として3年ほどトマトやきゅうりなどの野菜を栽培し、高品質な野菜を育てられるノウハウや土の配合レシピを独自に開発したという栗田氏。現在は、ストレスなく育った無農薬野菜のブランド「ゆる野菜」を立ち上げ、高級スーパーマーケットで一般的な価格の倍近い価格で取り扱われているという。
栗田氏は、会社員から“脱サラ”して農家になった1人だが、自身も農地探しやビニールハウスの建設、栽培といった、非農家が新規参入する際のさまざまな“壁”に直面したと振り返る。「全国の新規就農者が同じ苦労を味わっており、大きな機会損失につながっている。何かしら仕組みとして解決できれば、新しい農業の新陳代謝が生まれるのではないかと強く思うようになった。すべての課題を垂直統合型で解決できるのがLEAPだと思っている」(栗田氏)。
現在は、同社の従業員が直営モデルで野菜を育てているが、2018年度中にはフランチャイズモデルを開始する予定。農地や施設、資材、野菜の販売などで、一律15%の手数料をとる。
LEAPが設定するファーマーのKPIは、600㎡でトマトを栽培した場合に、年間の売り上げが約670万で、コストが約250万、手取りが約420万円ほどになる。労働時間は年間1500時間で、時給は約2800円になる計算だ。週に5日間、8時半~17時半まで働き、夏休みも1カ月間取れるという。「ゆとりのある農家の新しい働き方も提案したい」(栗田氏)。
ただし、コスト削減を追求した同社の仕組みでも、ファーマーになるには1000万円近い初期費用が掛かってしまうと栗田氏は話す。そこで同社では、第一勧業信用組合と提携して、農業を始めるにあたり必要な初期費用を工面する、低利率の独自ローンメニュー「LEAPスタートローン T」を提供する予定だという。また、将来的には農業オーナー制なども導入したいとした。
同社では、サービスをローンチした2016年9月に寺田倉庫、三菱UFJキャピタルの投資ファンド、個人投資家から総額約6000万円を調達。2017年4月には、グリーベンチャーズ、寺田倉庫、三菱UFJキャピタルの投資ファンドから資金を調達し、日本政策金融公庫農林水産事業の「青年等就農資金」なども組み合わせて総額約3億円を調達した。これらの資金を、LEAPの栽培検証のさらなる体制拡充や、フランチャイズモデルに向けたシステムを含めたプラットフォームの機能改善などに充てるとしている。
栗田氏は「耕作放棄地や食料問題など、既存の農業領域に潜む顕在的な課題を解決するプラットフォームにしていく。さらにその先では、地方創生や食育、貧困といった問題も含めて解決したい。LEAPを通じて、農業生産集団を生み出していきたい」と展望を語った。
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