さらに調べると、学位記も多数出品されていた。学位記とは、大学などが学位を取得したことを証明するために交付する書面のことだ。東京大学や京都大学、慶應大学や早稲田大学などの有名大学ばかりが並んでおり、悪用するために買うとしか思えない状態だ。中には、個人情報を売り物にするためか卒業アルバムを売っている例もある。
そのような出品例を見て、ある大学生が「じゃあ、去年の課題(レポート)売れないかな」と言っていた。同じ学生は、「メルカリでやりとりした人がおそらく同じ大学の人だったことがある。うちの大学名で検索したら、明らかに内部の犯行らしいものも多数見つかる」と言っていた。
Twitterでも、
「メルカリの闇市感すごいな。僕も大学でダウンロードした論文をメルカリで売るか」
「メルカリで去年どのうちの大学の講義で出た課題の論文を販売しようかな」
などのツイートが多数見つかる状態だ。
メルカリではどんなものでも買い手さえつけば売れてしまう。しかし、いくらお小遣いが足りないといえ、このような明らかにルールに違反したものを躊躇なく売ることには強い疑問を感じる。
卒業シーズンにメルカリを見ると、卒業した子たちが出品する制服であふれている状態だ。着用済みのものが高値で売買されており、中には顔が写らない状態で撮った着用写真がついているものもある。
「メルカリで高校の時に使ってたローファーを売ったら、1700円ですぐに落札されたんだけど、その買った人の評価とかを見たら、コスプレの中古ばっかり買っててこれ◯◯ネタにローファー使われるのか?って思ったけど金が入るからどうでも良くなった」
という投稿をTwitterで見つけた。つまり、完全にブルセラ目的で売買されている可能性が高いというわけだ。メルカリでは「らくらくメルカリ便」を使えばお互いに住所がわからない状態で発送することができる。しかし、それ以外の方法で送った場合は買い手に自分の住所を知られてしまい、危険な目に遭わないとも限らない。
メルカリでは、盗品を売りさばく事件も起きている。2015年12月、京都市内の私立大学の教室内で、3年生の女子学生(20)のアナスイの財布と現金5500円が盗まれた。授業前に財布が入った鞄を教室に置いたままその場を離れていて盗まれたという。翌日、女子学生はよく似た財布をメルカリで発見。すでに購入していた購入者に連絡を取って財布を買い取り、特徴などから自分の財布であることを確認した上で被害届を出していた。出品者情報から同大学2年の男子学生が浮上。犯人は犯行当時は19歳の未成年だった。
お小遣いに乏しい高校生や大学生の間で、メルカリは大事なお小遣い稼ぎの場となっている。しかし、明らかに問題ある出品も多く、たとえば出席カード売買などが大学側にバレてしまったら処分される可能性も出てくる。また、わずかなお金のために個人情報が危険人物に渡り、危険な目に遭う可能性もある。
保護者はメルカリの現状を知り、子どもたちがどのような使い方をしているのかを確認しておく必要がある。そして、問題ある使い方をしていたら注意し、トラブルに合わない安全な使い方をアドバイスしてあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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