ヤマト運輸とディー・エヌ・エー(DeNA)は4月16日、自動運転で荷物を届けることを見据えた「ロボネコヤマト」の実証実験を、4月17日から国家戦略特区である神奈川県藤沢市の一部エリアで開始することを発表した。深刻化するドライバー不足や再配達問題の解消を目指す。対象エリアは、藤沢市の鵠沼海岸1~7丁目、辻堂東海岸1~4丁目、本鵠沼1~5丁目で、約3万人(1万2000世帯)がサービスを利用できる。実施期間は4月17日から2018年3月31日まで。
実験では、車内に保管ボックスを設置した専用の電気自動車を3台使用し、ヤマト運輸の施設を利用する。将来的には完全自動運転を目指すが、今回の実験ではドライバーによる有人運転で荷物を届ける。ただし、顧客が自身で荷物を車両から取り出すことを想定していることから、ドライバーは荷物の受け渡しなどには関与しない。
両社では、新たな荷物の受取り方を検証する2つのサービスを展開する。1つ目が、10分刻みで配達時間帯を指定して荷物を受け取れるオンデマンド配送サービス「ロボネコデリバリー」。対象エリア内であれば、最寄駅や会社など自宅以外の場所でも受け取りが可能。冷凍や冷蔵商品にも対応しており、荷物が到着する3分前にスマートフォンに自動音声で通知する。配達対応時間は8~21時。
2つ目が、複数の地元商店の商品をインターネット上の仮想モールで一括購入し、自宅まで運んでもらえる買物代行サービス「ロボネコストア」。こちらも冷凍・冷蔵商品に対応しており、荷物の到着時刻はスマートフォンからリアルタイムに確認できる。藤沢市では、本鵠沼商店街、鵠沼海岸商店街、プチモールひがし海岸など、約20店舗の商品を購入できる。配達対応時間は8~21時だが、店舗の営業時間に準じる。利用料金は、注文総額が3000円未満の場合324円で、3000円以上の場合は無料となる。
同日、藤沢市で開催された記者発表会には両社のほかに、内閣府副大臣の松本洋平氏、国土交通大臣政務官の根本幸典氏、衆議院議員の星野つよし氏、神奈川県知事の黒岩祐治氏、藤沢市長の鈴木恒夫氏、藤沢市商店会連合会 理事長の齋藤光久氏など、そうそうたる顔ぶれが揃い、同プロジェクトへの期待の高さをうかがわせた。
登壇したDeNA執行役員 オートモーティブ事業部長の中島宏氏は、国土交通省や藤沢市など、「多くの皆様のご協力がなければ(プロジェクトの)実現までこぎつけなかった」と関係各社に感謝を述べた。また、宅配ドライバーには、重い荷物を素早く運ぶ「体力」、セールスも含めた「コミュニケーション力」、安全に届ける「運転技術」の3つが求められると説明。ロボネコヤマトによって、こうしたスキルを補うことで、より幅広い人に雇用の機会を提供したいとした。
続けて挨拶した、ヤマト運輸 常務執行役員の阿波誠一氏は、2016年7月のプロジェクト発足以降、DeNAと荷物配送の“ラストワンマイルのオンデマンド化”の可能性を模索してきたと説明。今回の実証実験を通じて、「まるで屋外で待ち合わせをしているような感覚で荷物を受け取ってほしい」と話し、どのような場所や時間帯で受け取り需要が高いのかを検証したいとした。同時に、路上での受け取りとなるため、十分な安全対策も講じたいとした。
今回の実験を通じてサービスの受容性を検証するほか、利用者からの要望を集める。また、2018年をめどに一部の配送区間で自動運転を導入する予定だという。実験では日産の車両を使うが、「どの企業の自動運転技術を取り入れるかは、まだ一切決まっていない」(DeNAの中島氏)という。
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