さあ、白状しよう。皆さんにもきっと経験があるはずだ。電話をかけるのを避けて、代わりにテキストメッセージやメールを送ったことがあるだろう。
そして、それは相手を思いやってのことだったはずだ。
リアルタイムのコミュニケーションである電話では、テキストメッセージにはないリスクが生じる。電話をかけるタイミングが悪かったら、どうなるだろうか。削除ボタンのない伝達手段で、気まずいことや愚かなことを言ってしまったら、どうなるだろうか。テキストメッセージであれば、相手は自分の都合のいい時間に返信することができる。
しかし、本音を言えば、自分が単に相手と話したくなかっただけなのではないだろうか。
Ciscoが2016年に実施した調査によると、2020年までに、全世界の約54億人(地球上の人口の4分の3以上)が携帯電話を持つようになるという。これらの端末がわれわれの生活を支配するようになればなるほど、間の悪いタイミングであなたの話を遮ったり、冗談を笑ってくれなかったりする人とリアルタイムで話すよりも、文字や絵文字を少し入力することの方が楽になる。市場調査や各種の統計を手がけるStatistic Brainの最新のデータによれば、毎月、全世界で5600億件以上のテキストメッセージが送信されているという。
「電話で話すことは、もはや理にかなわない」。そう語るのは、ペンシルベニア州フィラデルフィアにあるテンプル大学の2年生で20歳のPaige Pammerさんだ。「テキストメッセージだと、電話で安心して話せる人よりはるかに多くの人とコミュニケーションできる。母になら気楽に電話をかけられるけれど、研究室のパートナーになんて絶対に無理」(Pammerさん)
筆者もPammerさんの意見に同感だ。筆者が大学を卒業したのは、彼女が生まれる前のことだ。かつては電話をかけるのが大好きだった。子どもの頃、いとこと一緒にいたずら電話をかけたのは、特に楽しかった。しかし今では、電話をかけることは面倒な作業でしかない。筆者の仲間にも同じように考える者が大勢いる。1960年代、もしくは1970年代生まれが大半を占める筆者の友人たちを対象に簡単な調査をしてみたところ、多くの友人は電話でのリアルタイムの通話をあっさりと切り捨て、自分にとってもっと簡単で効率的な通信手段を選ぶことが分かった。
本記事の執筆に取り掛かったとき、筆者は、テキサス大学のコミュニケーション学准教授であるKeri K. Stephens氏に電話をかけることはしなかった。Stephens氏は、生まれてからずっと携帯電話と共に生きてきた大学生を相手に、セールスコミュニケーションの講義を行っている。筆者は同氏に電子メールを送った。最初のメールではインタビューを依頼し、次のメールではインタビューで話し合う内容を大まかに伝えた。
そして、インタビューをするときがやって来た。筆者はStephens氏に電話をし、45分間喋った。ただ、少し恥ずかしいことに、筆者が近頃通話をしていた多くのときと同じように、インタビューが近づくにつれて、緊張を感じるようになった。一体どうしてしまったのだろう。われわれはどちらもプロフェッショナルだというのに。彼女は筆者からの電話を待っており、敵対的な状況でもなかった。体が震えたり、手のひらに汗をかいたりしたわけではないが、テキストを入力しているときには決して感じない、静かで控えめな恐怖を覚えた。それは、相手がどのような態度をとるのか分からないことと、インタビューの話題に対して自分の知識は十分だろうか、という漠然とした緊張感が入り交じった恐怖だ。
要するに、筆者は「電話で話す」ということの腕が鈍った状態になっているのだ。
Stephens氏はこのような不安を学生から常に感じ取っている。Jurys Inn Hotel Groupが2013年、英国の2500人の労働者を対象に実施した調査では、18歳~24歳の回答者の10人中4人が電話をかけるときに緊張すると答えた。
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