内閣府は、沖縄県南城市でバス自動運行システムの実証実験を3月20日から開始している。期間は4月2日までを予定。一般車両が通る公道という交通環境で、かつ公共バスで使われる車両を使った技術実証は日本初という。
実験が行われている南城市あざまサンサンビーチ地区は、那覇空港から車で約1時間の距離にある。実験で使われる往路/復路の合計はおよそ2.4km。最高速度は35km/hで、仮想バス停を往路と復路ともに各1カ所ずつ配置する。
自動運転レベルは、「レベル2」相当と呼ばれる自動走行だ。ハンドルおよびアクセルの自動制御、走行路に沿った車線維持制御、バス停での正着制御、障害物の検出と車線変更の制御を実証実験として行っている。なお、完全自動化は「レベル4」あるいは「レベル5」となる。
今回の実験のスタートにあたって出発式を開催した。内閣府大臣補佐官の島尻安伊子氏が登壇し、「このバス自動運転実証実験は、内閣府が取り組む戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究開発と、沖縄振興行政とを組み合わせ、最先端の自動運転技術を活用して沖縄の公共交通の活性化、そして交通問題の改善を目指そうとする取り組み。沖縄担当相の鶴保庸介大臣の『沖縄から始めたい』という強い思いがあってこの日を迎えた」とあいさつした。
なぜ南城市が選ばれたのか。内閣府によれば、公道だが比較的交通量が少ないこと。また、南城市は沖縄でいち早くコミュニティバスを導入するなど、公共交通の再編を見据え「地域公共交通網形成計画(PDF)」に積極的に取り組んでいる地域であることも理由の一つだとした。
南城市長の古謝景春氏は、今回の実証実験について、「人口減少や少子高齢化が進行する中、地域の移動手段としての公共交通や地域への移動のための路線バスのさらなる利便性向上の活用が模索されている。南城市では、交通弱者対策として、新たな交通システム“おでかけなんじい”を導入し、観光客の市内での移動手段を確保するとともに市民の足として定着している。今回の実証実験によってコミュニティバス等での自動運転技術の活用を想定し、公道における公共バスへの適用に向けた実証実験がここで行われることは意義深いこと」と語った。
沖縄に限らず、路線バス事業は事業的にも厳しい地域が多い。バスの自動運行によって公共交通の活性化や渋滞緩和、完全自動にはならずとも、自動制御によるドライバーの省力化や技能の補完によって採算性の向上を目指す。6月には2回目の実験を離島で行うことを予定している。
試乗を終えた島尻氏は、「クルマは何回かあるが、バスは初めて。バスは移動できる人の数が多いので、実効性があり可能性を感じる。東京では、お台場と虎ノ門間で2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた自動走行の取り組みをしているが、先駆けたいい体験をさせてもらった。高齢者の事故が多い中で、科学技術として発達することが安心・安全につながるのではないか」とコメントした。
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