功徳を積むことを大切と考える、敬虔な仏教徒が多いミャンマーは治安がいい。しかし、「タクシーの忘れ物」が戻ることはあまりない。というのも、忘れ物を届けるシステムが確立していないためだ。
そんなミャンマーで「Facebookを使った忘れ物探し」が流行っている。
ミャンマーのタクシーは、その多くが個人タクシーに近い。外国へ働きに行っていた人が中古車を購入して帰国し、タクシー運転手になるケースや、資金のある人がクルマを購入し、運転手にレンタルするケースなどが多い。
ここ数年は、「ハローキャブ」などの配車サービスと契約して運用する人も増えており、こうしたタクシーに忘れ物をした場合は、乗車したクルマの記録が残るため手の打ちようがある。しかし、個人運営のタクシーでは、運転席の登録証に記してある運転手名やクルマのナンバーなどを覚えていない限り、あとから追跡のしようがないのだ。
一方、運転手が忘れ物を届けてあげたくても、乗客の自宅から乗せた場合でもなければ持ち主を探せない。降車数十分後に忘れ物に気づいた乗客があわてて降りた場所へ戻ると、運転手が待っていてくれたなんて美談も時々聞くが、大抵の忘れ物は戻ってこない。運転手側からは、「どうしても落とし主が見つからず、拾ったお金は僧院に寄付した」という話も聞こえてくる。
これまでタクシーの忘れ物や落とし主捜しに力を発揮してきたのはラジオだ。2015年の調査で、テレビ普及率が50%に満たなかったミャンマーでは、ラジオの影響力がまだ大きい。ほとんどのラジオ局が、忘れ物捜索の番組をもっている。
たとえばシティFMでは、1日に3回「LOST FOUND」という1時間番組を放送。同局のFacebookページには、番組を通して見つかった落とし主へ落し物を引き渡したというニュースが、定期的に掲載される。
スマホによるモバイルインターネットが市民に急速に広がって以降、落し物探しの手段のひとつに加わったのがFacebookだ。忘れ物をした人は、タクシーの乗車場所や時間、車種など覚えている限りの情報を投稿し、“友だち”にシェアを要請。逆にタクシーで忘れ物を拾った人には、どこでどんな状況で見つけたかを拡散させるのだ。
こちらはその一例。
こちらは、自分が拾った名刺入れの落とし主探しをする在住日本人の投稿。「知人にこの方法で見つかった人がいたのでやってみた」とのこと。
ミャンマーでは3月21日に、シンガポールの配車サービス「Grab」がサービスを開始した。米国の「Uber」も進出を発表している。このような“のどか”な忘れ物探しも、近いうちに消えてしまうのかもしれない。
(編集協力:岡徳之)
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