玉置氏:お互いに方向性が見えてきたと思えたタイミングは、モーションキャプチャーの収録をはじめたときでしょうか。それにはエレファンテさんにも来ていただいたのですけど、その場で話し合いながら文法みたいなものが固まってきたかなと思います。
日暮氏:シナリオライターの仕事として、ボイス収録の立ち会いはよくあることですけど、モーションキャプチャーの収録を見るのは初めてで。動きがあるとイメージがわきやすくなりましたね。
玉置氏:今のゲームは分業で作っていますけど、今回のような新しい挑戦ともいえるタイトルでは、全行程を見ていただいてイメージの共有を図るのは大切だと思いましたので。
日暮氏:素材が用意されていてオーダーも決まっているのは、仕事としてはわかりやすいですけど、ゼロベースに近い形から一緒に作り上げるのは刺激的でした。新しいもので面白いものを作っていることには間違いがないことがわかっていたので。モチベーションが落ちることはなかったです。
稲葉氏:今収録されているシチュエーションやセリフは、膨大に書いたテキストと付箋に書かれた案の一部ですから、よりすぐりのものが味わえると思います。それに、使われていないものは無駄にはなっていなくて、作り上げる段階で設定もできていきましたし、試行錯誤があったからこそ、今のひかりちゃんが作り上げられていると思っています。
玉置氏:最終的に「VRの驚きを提供する話の流れのシナリオ」と「キャラクターを知ってもらうため、愛着を持ってもらうためのシナリオ」の2つについては、エレファンテさんと一緒になって取り組んで方法論も見えてきて、うまく2つを融合させる形でたくさん盛り込めたのではないかと思います。
「より感情移入してもらう筋書のあるドラマ」に関しては、ゲームであることを利用して、7日間の生活を繰り返しながら、だんだんといい成績をひかりちゃんが出すようになって、最終的にはいい成績に到達して感動できる。このゲームプレイの流れの体験をドラマとしてプレーヤーに提供することにしました。ベタ書きのシナリオではなく、VR空間での長期的な体験をシナリオの一種として捉える、そういう構造をサマーレッスン独自の要素として構築できたかなと思います。
日暮氏:書き方ややり方が違うものでしたけど、実際にやってみてわかることが多かったですし、発見もあって面白かったです。サマーレッスンに関わってVRコンテンツにおける経験値は上がりましたし、今後何か作るとなったときに、試行錯誤した時間をコンテンツの魅力に費やせるかなと。まだ発展途上の領域ですし、今後VRが発展していくなかでも、日本はキャラクター文化が強いですから、いかに世界観やキャラクターを魅力的に見せていくか、という需要も増していくととらえています。いろんな形で取り組んでいきたいですね。
稲葉氏:VR空間のなかで魅力的なキャラクターを表現するという観点でのシナリオを本格的に手掛けた人というのは、まだ多くないと思います。貴重な体験と勉強にもなりましたし、単純に面白かったのでまたこういうことをやりたいという気持ちは強いです。
玉置氏:PS VRをはじめとしてデバイスやコンテンツが世の中でより普及したときに、どのようなVR文化ができてくるかが楽しみですね。例えばOculus Story StudioがVRにおけるストーリーテリングのある映画に取り組んでいますが、サマーレッスンとは違うものであると思いますし、国内でも「狼と香辛料」で知られる小説家の支倉凍砂さんが「Project LUX」というVR物語を作ってまして、それぞれが違う手法で作られています。
そんななかでPlayStation VR専用の家庭用タイトルであるサマーレッスンに課せられていたのは、VRをあまり体験されていない、VRがどんなものかを知りたいという段階のユーザーに、多くの人に愛されるキャラクターと体験を提供するという大きなミッション。その観点で作りましたし、コンシューマゲームとしてのVR方法論、ストーリーテリングの手法はひとまず示せたと思います。それをもとにさまざまな作品世界が出てきて、VRが価値のあるものになっていって、日常の楽しみという所まで浸透していくといいなとは思います。
玉置氏:サマーレッスンは当初から、VRキャラクターとのコミュニケーション体験について新たな可能性を提示していくプラットフォームとして位置付けています。なので、我々としても新たな発見があればその都度提供していくつもりですし、それを2017年も通して展開していく計画です。なので、PS VRをお持ちの方がまだまだVRを押入れにしまっておけないような、充実したVRの日々が続けられるようにしていきます。先日パッケージ版やフィギュアの発売も発表しましたが、周辺の展開もあわせておこなっていきますので、引き続きサマーレッスンプロジェクトの展開にご注目を頂ければ幸いです。
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