PS VR「サマーレッスン」の“魅力あるVRキャラ”への挑戦--シナリオ担当者に聞く - (page 3)

「笑い合っていた記憶しかない」会議で生み出されたシチュエーションたち

――シチュエーションについては、どのようなことを考えられながら、実際に盛り込んでいったのでしょうか。

玉置氏:キャラクターとの近さが魅力だとしても、ただ近づけさせるだけではワンパターンですし、不自然な近寄り方は覚めてしまう要因にもなります。あの手この手で近さを感じてもらって、しかも飽きさせないようにすることを考えていました。なので付箋にメモ書きをして出し合うような、アイデアの段階からお2人には加わっていただきました。

日暮氏:ほんと付箋の数は多かったですね。いっぱい提案しましたし、打ち合わせでは実際にやってみたりしました。フォークでスイーツを食べさせてくれるシチュエーションがダウンロードコンテンツで実装されていますけど、会議室で男性同士で「あ~ん」とか言いながら試したりしてましたし……(笑)。

追加体験パックの「セカンドフィール」より。ケーキを食べさせたり、ひかりから食べさせてもらったりする
追加体験パックの「セカンドフィール」より。ケーキを食べさせたり、ひかりちゃんから食べさせてもらったりする

 あと屋外でひかりちゃんがバットの素振りをするシチュエーションがありますけど、プレーヤーが動くことができないことを逆手にとって、キャッチボールと称してひかりちゃんが剛速球を投げ込む案もありました。キャッチャーなら動かないからと。

玉置氏:キャッチボールはプログラマも交えて真面目に検討したんです。ただコントローラで振動を感じられても、反動を感じるぐらいでないと実感が持てないということで、残念ながら見送りました。

――コントローラの活用でいうと、スマホをコントローラに見立てて耳元で音声を聞くというのもありますが、あれもあらかじめ考えられたものなのでしょうか。

日暮氏:それは最初予定してなくて、話し合いのときに、ふと「手に取って近づけたら面白いよね」と言って採用されたんです。体験している本人にとっては普通のことに思えますけど、はたから見ていると、コントローラに耳をあててる光景は面白いんですよね。

玉置氏:AM事業部が主体となって展開している「VR ZONE」という、VRアクティビティをメインにした事業がありますけど、あれを見ていてVRを体験している人を外から見るのも面白いと実感したんです。なのでサマーレッスンでも、外から見てて「あれ?」と思えるような光景が生み出せないかと考えていたんです。それでいくと、コントローラをスマホに見立てるという体験と、外側から見る光景は、キャッチーな要素になるなと。発売前の東京ゲームショウ2016で出展したときも、電話を受けてもらうシーンまでやっていただいたのですけど、集まっている来場者に、コントローラを電話に見立てている、その光景を見ていただきたかったんです。

――シチュエーションの話し合いの雰囲気は楽しそうな感じも伝わってきますが、実際はいかがでしたか。

日暮氏:ほぼほぼ毎週会議をしていましたけど、議論はしても言い合いみたいなものはなく、むしろいつも笑い合っていた記憶しか無いですね。

玉置氏:本当は苦しいことであったと思うのですけど、それに付き合っていただけたのはありがたかったです。

稲葉氏:やはりいろいろな案を出てくると、個々の趣味がバレます(笑)。

日暮氏:だんだんと大喜利みたくなってきてしまって。

インタビューでも伝わってくるほどに、制作を楽しんでいる様子がうかがえた
インタビューでも伝わってくるほどに、制作を楽しんでいる様子がうかがえた

玉置氏:どうみても笑いを取りにいこうとしている案もたくさん出てきました。でもそういう雰囲気だからこそ面白いシチュエーションができたのではないかと。新しい分野ですから、あまり凝り固まらずにできましたし、オリジナルIPですから自由な発想ができるので、バリエーションは幅広く出せましたね。何よりブレストにおけるシチュエーション案の量とバラエティさ、方向性の的確さは、さすがに本職の方々だと思いました。思ってもみなかったアイデアや、しっくりくるシチュエーションの提案などを多く出していただけたので。

稲葉氏:ある程度枠組みを決めて作業をすることが多いので、それはそれで魅力もあるのですけど、これだけ自由にやらせていただいて、本当にいいのかなというぐらいのものもありましたから。楽しかったですね。

VR空間におけるテキストチャットも制約から抜け出せない

――スマホ風の画面で、ひかりちゃんとSNS風のテキストチャットができるシーンも、エレファンテのお2人が関わられているのでしょうか。

ひかりとテキストチャットでやり取りをするシーン
ひかりちゃんとテキストチャットでやり取りをするシーン

日暮氏:そうですね。キャラクターを掘り下げるうえで、ひかりちゃんとの対話以外のところでも、普段学校ではどんなことをしているのか、家族がどんな人たちなのかを提供しています。知らなくても進行に影響がないようにしつつ、自然な形で素顔が垣間見えるようにしています。

玉置氏:サマーレッスンの特殊なところは、女の子のキャラクターひとりだけにフォーカスしているところです。ただ、プレーヤーである先生とひかりちゃんだけでは、閉じた世界になってしまって、ひかりちゃんの魅力が伝わり切れないと思ったんです。ほかの人間と絡んだり、社会の中での置かれた立場とか、関係性が見えることによって、その人の魅力がより理解しやすくなると考えていたので。ここはここで、苦しみがありました。

日暮氏:単純にスマホを近づけさせて読ませるということも考えられていたようなのですが、表示させる文字のサイズや文字数、画面の解像度の問題もありました。それであのように大きな画面で、テキストの吹き出しがはみ出して表示しているのですけど、あれは発明ですね。

玉置氏:最終的にユーザービリティを重視して、読みやすさを取った形ですね。これらサマーレッスンで使われているVR専用UIは、さまざまな面でこだわりましたし、今後VRゲームにおける標準的な考え方、UIの方法論のひとつとして活用されていければと思います。

――ここはテキストの表示となるので、VR特有の制約から解放された作業だったのでしょうか。

玉置氏:最初はそうなると思っていたのですけど、全然そんなことはなかったです。サマーレッスンの場合は、テキストのやり取りをしたあとすぐに本物の本人と会えるんですよね。なので、あまり誇張した口調となると違和感を感じてしまうと。お互いに影響を与え合っているシーン同士なので、そこにも制約はありましたね。

日暮氏:テキストの長さ、そしてテンポ感も考えました。VR空間内の解像度を考えると、長いものを読ませるのにはまだ向かないですし、できるだけコンパクトにしようと。なのでスタンプが定着しているのはすごくありがたかったですね。感情を示しやすいですし、オチがつけやすかった。

稲葉氏:テキストチャットは終わりどころが見えにくいので、スタンプを送って終わるという暗黙の了解は現実でも通用することなので違和感は少ないです。会話を締めやすいという意味でもありがたかったです。

玉置氏:チェックしながら考えていたのは、立ち絵のあるテキストアドベンチャーでは、そこで表示される文章が、すべてというと語弊があるのですけど、「文章こそがキャラクターたちの生の声そのもの」なんです。でもサマーレッスンではひかりちゃんはVR空間にいて、文章は現実とおなじく、あくまで遠隔地から通信手段を活用して送られてきた言葉なんですね。なので、それこそ改行のタイミングも含めて、裏の裏まで想像して書くということに注意をしながらテキストを仕上げていきました。

稲葉氏:「女子高生はこんな書き方しないです」と、何度も指摘されました。

日暮氏:そこも今どきの誇張した表現だとわかりにくいし、普通すぎてもいけないというバランスに苦心しました。あえて表に出していない設定もたくさんありますが、設定を語りたいわけではなく、あくまでひかりちゃんを好きになってもらうにはどうするかが大事ですので、あまり設定を押しつけて負担にならないように配慮しました。

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