LUISを活用したPepperの開発事例として、ソフトバンクロボティクスが開催した「Pepper App Challenge」というPepperを活用するアプリコンテストで部門賞を受賞したヘッドウォータースの「Pepper Commerce」というAI接客アプリが紹介された。
Pepper Commerceは、Pepperによる接客に自然な会話を取り入れ、顧客満足度の向上を生み出そうという意図で開発されたという。
具体的には、Pepperに「SynApps」と呼ばれるクラウドロボティクスAPI群とAzureのAPIを連携させることでPepperに相手のことや会話の趣旨を記憶し、LUISを活用して言葉の意図を理解するという能力を付与し、これによって自然な会話や気の利いた声かけ、タイミングのいい挨拶といった体験を生み出すことができるようになったという。
実際にスポーツクラブの店頭で実証実験を行ったところ、Pepperによる接客回数が増加したことでスタッフの負担が軽減されたほか、顧客満足度が高まったことで契約継続率の改善にも寄与したのだそうだ。
開発に携わったヘッドウォータース先端技術研究室の室長である木村正吾氏は「例えば、トイレの場所を聞きたいとしたとしても、表現の方法は多種多様ですべての想定質問を辞書化することは不可能だ。それをLUISによる言語解析がカバーしてくれる」とLUIS導入の意義を説明。自動的な解析でカバーできなかった質問は、あとでLUISの管理画面で手動で学習でき、それによって精度を向上させることができるのだという。
木村氏は、PepperがAzureをはじめとするクラウドAPIと連携する意義について、「Pepper側は表現をしたり、接続されたデバイスを制御したりするだけで記憶や思考をつかさどる頭脳は全てクラウド側にある。これによって、他のPepperにも同じ頭脳=能力を持たせたり、また頭脳(クラウド)側の能力をさまざまなAPIによって作り込んでおくことで、Pepperに新しい機能を提供することができるようになる」とまとめた。
高野氏は、こうしたPepperとAzureによる新しいソリューションの開発環境を同社の認定パートナー企業に積極的に提供していくほか、コミュニティーを積極的に支援することでパートナーエコシステムを育成していきたいとしている。講演の最後に、高野氏は次のようにまとめた。
「Microsoft Azureのテクノロジを活用したさまざまなアイデアのフィールドテストはもう始まっている。そこで得られた知見をセールス、サービス、PR分野の業務活用に役立てていきたい。Pepperが“客寄せパンダ”としてではなく、業務に使われるようになる中で、AIの活用やIoTによるデバイス連携がより大きな役割を果たしていくことになるだろう。まだ、試行錯誤しながらではあるが、これからの歩みを進めていきたい」(高野氏)
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