2月21日と22日の2日間開催した本誌主催のイベント「CNET Japan Live 2017 ビジネスに必須となるA.Iの可能性」の2日目において、スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャーの三宅陽一郎氏が登壇。人気RPG「ファイナルファンタジーXV」を例に、ゲームにおけるAI活用事例について解説する「人工知能が拓くゲームの未来 ー FINAL FANTASY XV が見せる人工知能の世界 ー」と題したセッションを実施した。
我々が何気なく楽しんでいるゲームにもAIが欠かせないと三宅氏は語る。同社が2016年11月にリリースしたファイナルファンタジーXVは、意思決定技術や環境解析技術、知識処理技術など多くのAI技術を導入し、自身が操作するキャラクターやNPC(ノンプレイヤーキャラクター)に命を与えている。同ゲームタイトルは主人公4人がオープンワールド領域を旅するRPGだが、プレイヤーが操作するのはそのうちの1人。周りの3人はプレイヤーの意図を読み取り、攻撃や援護といったアクションを選択する。ここにAI技術が活用されていると言う。
産業革命、情報革命から続く社会変化の流れを踏まえて「現在は『知能革命』の時代に入りつつある」(三宅氏)。その結果ゲームも知能化し、ゲームの大規模化に伴うAIも独立が求められていた。そこでキャラクターの頭脳となる「キャラクターAI」、マップ上の経路検索や環境を認識する「ナビゲーションAI」、キャラクターを制御して映画監督の役割となる「メタAI」の3つに分化した。これらを実現するために同社はAIエンジン「Luminous AI」を開発。ヒートマップやアニメーション、ターゲット選択、移動先の候補データを制御するPQS(Point Query System)、パス検索、ステアリングをLuminous AIで制御し、ゲーム内のあるゆる意思決定の要件を構築するためのツール「Luminous Studio」を用意した。さらに内部的には意思決定を行う「Luminous AI Graph」と足下周りを見る「Luminous AI Navigation」から、ゲーム内のキャラクターなどを動かす仕組みだが、これらAIを用いた制御はエンジニアが担っていたものの、各GUIツールを用いることでプランナーやデザイナーが各キャラクターの頭脳を作ることが可能になったと言う。
それでは分化したAIについて説明する。まず、状況を監視し、キーとなる役割に適切なタイミングで指示を出すメタAIは、「ゲームはシミュレーションであると同時に舞台でもある。プレイヤーが楽しめる状況を人工的に作り出すAI」(三宅氏)だ。例えばプレイヤーのHP(ヒットポイント)が少ない場合、メタAIは仲間の3人いずれかにプレイヤーを助けるという命令を出し、回復アイテムを使用する。また、プレイヤーが危険な場合、メタAIは1番近い仲間を選んで指示を出す。もしくはプレイヤーがその場から逃げた場合は共に逃げ出すといった命令を出すことも。このように戦闘全体に緩急を与えてゲーム全体を引き締める役割を持つ。
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