この市場では、Amazonなどのグローバル企業がすでに事業展開しているが、勝算は大いにあると出澤氏は感じているようだ。その背景には、AIの特性がある。「AIは、今までのインターネット以上に生活に密着し、溶け込むものだ。いかにローカルの言語、文化、コンテンツ、サービスなどに寄り添うかが重要になる」(出澤氏)。
LINEは日本や台湾、インドネシアのシェアをほぼ独占するモバイルメッセンジャーであり、NAVERは韓国でGoogleを上回る検索ポータルの地位を確立している。出澤氏はその理由について、「高い技術力、それに現地の文化や慣習を徹底的にサービスに取り入れていくローカライズ戦略によるもの」と話す。AIではそのローカライズ(出澤氏は「カルチュアライズ」とも呼ぶ)が強みになる。具体的には、(1)LINEのコミュニケーション技術、(2)NAVERの検索技術、(3)両者が持つ豊富なコンテンツとサービス、(4)豊富なデータ、の4つだ。
中でも、3つ目のコンテンツとサービスについては、「バーチャルアシスタントにとって重要な点は、音声を認識してAIと自然な会話をすることだけではない。さまざまなコンテンツの中から、いかにユーザーを満足させる回答をするかだ」と出澤氏。その上で、LINEとNAVERには最適な回答に必要なコンテンツがあるとした。4つ目のデータについては、ユーザーベースで各国でトップであり、さまざまなコンテンツを展開していることに触れ、「AIの精度は機械に学習させるデータの量と質で決定する。他社にはない大量の高品質なビックエータを構築しており、これを使うことでAIの能力を上げることができる」と強調した。
エコシステム戦略も進める。当初、Clovaが対象とするコンテンツとサービスはLINEとNAVERのものだが、今後はサードパーティのコンテンツも増やしていく。一方で、「初期段階で重要なのはコンテンツの数ではなく、入力環境やデバイスに最適化されたサービス、キラーサービスがあるか」とも述べる。そこでも、音声認識や音声デバイスに最適化されたLINEとNAVER検索がそれぞれの市場で使えることは重要な差別化になるとみられる。
デバイス側では、ソニーモバイルコミュニケーションズ、LG、タカラトミーの3社とClovaを搭載したデバイスで協業する。ソニーとは「Sony Agent Technology」とClovaを搭載したスマートプロダクトを、2018年の商用化を目指して開発する。タカラトミーとはスマートトイを開発する。また、ホームロボット「Gatebox」を展開するウィンクルを連結子会社化し、Clovaを活用したGateboxの世界展開を進めることも明らかにした。
ClovaはLINEにとって新時代を切り開く重要なプロジェクトになるとしており、出澤氏は「(現在のAIは)スマートフォンでいうなら、スマートフォンが出た直後の段階。3年から5年のスパンで見ている」と展望を述べた。現在プロジェクトには数百人が関わっており、今後も拡大していくという。
まずは高いシェアを誇るアジア地域に注力するとしており、展開にあたって重視しているのは、「キラーなアプリやサービス」だという。これは、数週間したら使われなくなったという事態を避けるためで、音声でのコミュニケーションに最適化したLINEはその有力な候補になるとした。
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