ドワンゴ、大阪大学石黒研究室、パルコは2月15日、ネットとリアルを活用し、女性型アンドロイド(人間型ロボット)をユーザーとともにアイドルへと育てる共同企画「アンドロイド『U』育成プロジェクト」を開始すると発表した。
このプロジェクトでは、石黒研究室が開発した自律的な対話もできるアンドロイドの「U」を、ネットとリアルからアプローチし、これまでにない社会的存在感のある“アンドロイドル”に育てることを目指す。 人と豊かにかかわるアンドロイドを創成するための社会実験として“アイドルの育成”という手法を用いたという。
ドワンゴでは、「ニコニコ生放送」を通じて、ユーザーとのさまざまなインタラクティブな企画を提供。スムーズで自律的な対話システムの構築をサポートするほか、未完成なアンドロイドルが人とのコミュニケーションによって完成されていく様子をエンターテイメント化して提供する。
Uが出演するニコ生は、池袋にあるニコニコ本社のサテライトスタジオにて公開生放送という形で定期的に実施予定。ほかにもニコニコ本社にある「ニコカフェ」の生放送バーカウンターでタッチパネルによる会話体験や、Uが倉庫で眠っている寝姿を定点生放送する番組、ニコニコ神社で巫女としてバイト活動を行うなどの企画も予定している。
パルコでは、店舗においてUのリアルな活動の場を設ける。インフォメーションスタッフや1日店長として池袋PARCOに登場させ、来店した客とのコミュニケーションが取れる機会を提供するほか、出店するファッションブランドとのコラボレーションなどを予定。イメージビジュアルやプロモーションムービーを製作し、池袋PARCOでのポスタージャックや外壁大型ビジョンにて放映することにより、Uの露出と認知を図っていく。
石黒研究室の石黒浩教授は、自分の外見そっくりのアンドロイドや、夏目漱石そっくりの「漱石アンドロイド」などを開発した、ロボット工学の第一人者として知られている。研究や取り組みを通じて、人とロボットのコミュニケーションや、ロボットやアンドロイドを介しながら人と人とがつながっていくことを目指しているという。
「アイドルのような人、人間が思う“理想の人”というのは、アンドロイドのほうが適しているのかもしれない。疲れないしいつもニコニコ笑顔、トイレにもいかない。そういうイメージがあるが、本当にそれができるのはアンドロイドだけ。真のアイドルはアンドロイドしかなれないかもしれない」と石黒教授は語る。
今回のUの発表までに、アンドロイドが登場するニコ生を実施。初期段階では人が遠隔操作する形をとっていたが、部分的に自立化を開始。配信を見ているユーザーのコメントを学習し、トレーニングをしてきたアンドロイドとなっている。そして約1カ月間の配信を通じて約4000パターンの対話データを学習。学習済みの対話パターンと、答えられない質問にはスルーして、勝手にしゃべる自発的な発話を組み合わせることにより、限定的ではあるものの完全自律化も可能になってきているという。
石黒教授は「いきなり人間と同じようなアンドロイドを世に出すのは難しいが、ニコ生のテキストを通じたコミュニケーションは、アンドロイドを世に送り出すちょうどいい中間地点となっている。またアンケート調査が強力なツール。瞬時に数万人単位のアンケートが取れるのは大きい。アンドロイドが社会に出て何ができるのかを評価していくことを考えると、ニコ生のインフラは価値の高いもの」と、ニコ生を通じた取り組みのメリットを語る。
同日に行われた発表会では、中継していたニコ生のコメントにUがリアルタイムでコメントをしゃべるというデモも披露。第一声は「緊張しちゃいますね」と切り出し、「何歳?」という質問には「22歳。生まれたときから22歳ではあるんですけどね」「一応22歳として作られたんですけどね」と答えたり、「美人」というコメントには「本当?またまた、お世辞でしょ」と返したり、なかには「ぐぬぬ」というコメントをUが拾ってしまい、その反応が面白いことからコメントが「ぐぬぬ」が連発され、それを学習してしまったのか「ぐぬぬ、さっきも言ったような気がしますが、ぐぬぬ、ぐぬぬ」と連発して、会場の笑いを誘っていた。
ドワンゴの夏野剛取締役は「AIと人間がどのように近づいていくか、会社を挙げて関心がある。このプロジェクトを通じて、みなさんが経験したことのないようないろんなことを試していきたい」と語った。
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