スマートフォンは、小型軽量であるにもかかわらず高機能かつ多機能だ。このようなモバイルデバイスが実用レベルになるバッテリ駆動時間は、搭載されているLSIの省電力化はもちろん、エネルギー密度の高いバッテリが開発されて達成できた。ただし、大量のエネルギーを蓄えているバッテリの扱いは難しく、放熱設計が不適切だと発火事故を引き起こしかねない。
これに対し、Appleはバッテリを内蔵する電子機器の熱放散性を高めるため、グラフェンを熱放散シートに用いる技術を考案。この技術を米国特許商標庁(USPTO)へ出願したところ、米国時間2月9日に「GRAPHENE HEAT DISSIPATORS IN PORTABLE ELECTRONIC DEVICES」(公開特許番号「US 2017/0038803 A1」)として公開された。出願日は2016年2月9日。
この特許は、バッテリパックと、そこから電力を供給される各種電子回路で構成されたモバイル電子機器に限定した内容。クレーム(請求項)でデバイスの種類は言及されていないが、実施例の図面からスマートフォンやタブレットを想定していることが分かる。
バッテリパックにはバッテリセルが収められていて、バッテリパックと回路が袋状の部品(パウチ)に包まれている。そして、このパウチは、ポリプロピレン層があり、その全体をグラフェンの層でカバーする構造とされる。そのほかに、アルミニウム層などを使う構成の記載もある。
グラフェンは、炭素を1原子だけの厚みで平面上に結合させた、シート状の素材。熱伝導率が極めて高いとされている。バッテリと回路から発生する熱をよく伝えるため、熱を特定の場所に集中させず、効率よく放散できる。その結果、温度上昇を抑える効果が期待される。
シンプルな内容なので、このまま登録特許として成立するかどうかは不透明だが、スマートフォンの発熱や発火を防ぐ技術として実用化される可能性はある。
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