10代にとって承認欲求が満たされることが重要なことはこれまでも述べてきた。しかしそれだけでなく、彼らにとって自分が有名であるかどうかはとても重要なことのようだ。
今は、一昔前よりも有名になることは難しくない。たとえば、YouTubeやニコニコ生放送、MixChannelなどで配信しているユーザーから有名になる子はいる。ソーシャルメディアを使って発信することで、有名人の仲間入りができる。10代の子たちは、そのように仲間内で有名になったり、承認されたりすることに価値を置いている。
米Clapitによると、ミレニアル世代(1980~2000年生まれ)の4分の1は有名になるためなら仕事を辞めるという。「弁護士になるより有名になりたい」は30%、「医師になるより有名になりたい」は23%に上る。さらに、「大学卒業の資格を得るより有名になりたい」は10%、「有名になれるなら別の国に行く」は27%、「家族と縁を切っても有名になりたい」も8%いた。
「医師」や「弁護士」は、親世代にとってお金も地位もある最高の職業だろう。小さい頃から、親から医師や弁護士になるよう言われてきた人もいるかもしれない。しかし、ミレニアル世代は若い頃からインターネットに囲まれてきた世代であり、従来とは大きく異なった価値観を持っているのだ。
さらに下の2000年代生まれ、つまり米国で言うところのジェネレーションZとなる10代は、スマホネイティブでありソーシャルメディアネイティブ。彼らはさらにこの傾向が過剰となっているようだ。彼らが最近目立つのはMixChannel。ミクチャ有名人なるものも出てきている。その背景と問題点について見ていきたい。
しばらく前に小学生のなりたい職業にYouTuberがランクインしたことが話題となった。しかし、これはそれほど不思議なことではない。
大人世代にとって成功とは、周囲から認められたり、社会的に成功することを意味する。十分な収入を得ることや、自分の理想を実現することという人もいるだろう。一方の10代は、行動範囲も狭ければ人間関係も狭い。10代にとっての周囲とは、自分たちの周りになる。知っている仲間に認めてもらえるかどうかがとても重要なのだ。
加えて一部のYouTuberたちは、従来のテレビなどのメディアにも出ており、大人目線で見ても成功していると言える。しかも、投稿している内容はそれほど難しいことをしているわけではなく、商品紹介など一見自分たちでもできそうなことばかりだ。
クラレの小学1年生がなりたい職業調査(2016年版)によると、男児の1位は「スポーツ選手」、2位「警察官」、3位「運転士・運転手」であり、「研究者」が10位から6位にランクアップしていた。一方女児は、1位「ケーキ屋・パン屋」、2位「芸能人・歌手・モデル」、3位「花屋」であり、「デザイナー」が初のトップ10入りをした。
一般的に男児や女児が好む職業の他に、ノーベル賞で注目を集めた「研究者」が入っていたり、きれいな服を着て注目してもらえる「芸能人・歌手・モデル」が入っているあたりが彼らの本心を表しているのではないか。
注目されたい、賞賛されたい、承認されたいという気持ちは誰もが持っている。子どもにおいてその欲求はストレートだ。知っている範囲でキラキラして見える注目されている職業に就きたいと考えるのだ。いつも見ているYouTube(MixChannel、ニコニコ生放送…)で動画を投稿するだけで有名になれるかもしれない。それは、彼らにとって手っ取り早くすべてを手に入れる方法なのだ。
YouTuberに憧れる子どもたちは以前から多かったが、最近はサービス内での有名人を狙っている子たちが目立っている。「ミクチャ有名人」という言葉を聞いたことがあるだろうか。MixChannel内で多くのファンを抱えており、界隈で有名なユーザーという意味だ。最近は、 “MixChannel有名人”“Instagram有名人”“Twitter有名人”など、サービスごとに有名人が現れているようだ。
ためしに「ミクチャ有名人」「MixChannel有名人」などで調べてみると、ランキングやプロフィールをまとめた記事まである。執筆時点でファン数はそれぞれ、「まこみな」が43万7000人、「りかりこ」が40万人、「渡辺リサ」が24万4000人、「みやかわくん」が21万人などなっている。
「プロもいるYouTuberならともかく、MixChannelで著名になってどうなる?」と感じる大人も多いのではないか。しかし、MixChannelで著名になった双子ダンスの「まこみな」は歌手デビューしている。それに次ぐ人気の双子モデル「りかりこ」もオリジナルソングやオリジナルミュージックビデオを作成して公開している。
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