シリコンバレーに飛び火した「トランプ政権への対応」という踏み絵

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 先週後半に、Donald Trumpが一部のイスラム教国からの移民・難民の入国制限を命じる大統領令に署名して以来、各媒体のいわゆるテクノロジー欄もこの話題に関する記事であふれている。決して愉快ではないが、今回はこの話題に関して目についた内容を取り上げてみる。

 入国制限の大統領令が出されたことを受け、シリコンバレー主要各社の経営陣が揃って「こんな政策は支持し難い」などと批判のコメントをしていたのは既報の通り。また今週に入っては、たとえばGoogleで社員たちが仕事を放り出して抗議集会をやった――Sundar Pichai(CEO)やSergey Brin(共同創業者)もそれに参加していたとか、あるいは大統領令が法律違反にあたるとして提訴したワシントン州検事総長を支持する考えをMicrosoftやAmazonが示していたという話もすでにどこかで目にされたかもしれない。

 この件の影響については、たとえば「国外出張に出かけて、そのまま帰国できなくなりかけた」という米Google社員(イラン系の女性社員だったか)の話なども見かけた。まったくひどい話である。

オルタナ右翼が糸を引く新政権

 BrinもPichaiもあるいはSatya Nadella(Microsoft CEO)も移民だから、今回の動きに身の危険を感じるのも無理はない(自分たちもいつ標的にされるかわからない、といった意味で)。その点では企業人としての単なる損得を超えて、「ここでだんまりを決め込み、嵐をやり過ごすわけにはいかない」と感じているのだろうかと想像できる。

 ただし、今回の入国制限を含むさまざまな大統領令を準備したとされるSteve BannonというTrumpの取り巻き(昔風に言えば「懐刀」)は、ただ者ではない。簡単にいうと新右翼("Alt-Right")のニュース媒体「Breitbart News」の責任者であり、同媒体などを使って、民主党だけでなく共和党主流派にも攻撃を加え、結果的にはTrumpの当選につながった。

 「米国で最も危険な政界関係者("This Man Is the Most Dangerous Political Operative in America")」という見出しの記事で2015年10月にBloombergに特集されていた、かなり「ヤバい」感じのする人間であり、また大統領選直後には「シリコンバレーにはアジア系のCEOが多すぎる("When two-thirds or three-quarters of the CEOs in Silicon Valley are from South Asia or from Asia, I think...")」などと口にして、「移民でも能力のある人間は締め出さないようにしないと」とTrumpから諌められたという逸話がある、いわく付きの人間でもある。ちなみに何が「ヤバい」かというと、Trumpに対してしか説明責任がない、つまり選挙で選ばれた政治家でもなく、官僚や軍人のような組織にも属していない点だ。そんな民間人が国家安全保障会議(NSC)のメンバーにまで起用され、職業軍人のトップなどより大きな影響力を持っているという話もあって、全くあきれてしまう。

 そんな白人至上主義者のBannonであれば、今回の大統領令に反発の声が上がることくらいは織り込み済みで、GoogleやMicorsoftあたりのトップが何を言おうと痛くもかゆくもない、といったところかもしれない。なんとも憂鬱になる話である。

 また、AppleのTim Cookが今後どんな動きを見せるかというのも興味をひくところだろう。Cookは「黒人家庭の庭先でクークラックスクラン(KKK)が十字架を燃やすのを子供の頃に目撃してショックを受けた」といい、「世界で最も影響力のあるゲイ」とされたこともある。

 そのCookが、たとえば「同性愛は病気の一種(だから治療によって治せる)」などと発言してリベラル派からひんしゅくを買っていたことなどで知られる副大統領のMike Pence――インディアナ州知事時代には「宗教上の理由からLGBTの権利を制限しても構わない」とする州法を通し、CookやSalesforce.com CEOのMarc Benioffなどから批判されていた――や、若い頃、アラバマの検事時代に「KKKでもマリファナ(pod)をやらなければOK」など冗談を口にしていたことなどが知られているJeff Sessions(アラバマ州選出の上院議員。次期検事総長への就任が確実視されている)のような人間にどう応じるのか。生理的に波長があうはずもないとも思えるが。

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