米ラスベガスで開催されているCES 2017において、ソニー エレクトロニクスデピュティプレジデントの奥田利文氏が、日本のメディアの取材に応じ、同社の北米市場での取り組みなどについて説明した。
奥田氏は「過去3年は赤字を止血して、事業を立て直す時期だったが、2017年は構造改革から成長モードに変化していく年になる」として、北米市場における事業成長に意欲をみせた。
奥田氏は「2014年はテレビ事業の再生を行い、家電量販店「ベスト・バイ」において、ショップ・イン・ショップ展開を開始した。これは「ソニー・エクスペリエンス」と呼ぶもので、4Kテレビなどの説明をしっかりできる環境を作り出した。2015年にはイメージング分野に力を注ぎ、特に「Eマウントレンズ」を通じて、キヤノンやニコンにはない提案をした。ここではカメラ専門店の展開も強化した。そして2016年は、オーディオ事業の再構築に取り組んだ。いずれも店頭において、プロミアム価値を届けることを重視し、店も場所も選んで展開してきた。売り上げは決して伸びている状況にはないが、すでに事業は健全化し、利益貢献もできている」と、過去3年の取り組みを振り返った。
ソニー・エクスペリエンスは、現在、ベスト・バイの390店舗で展開。「数年前まで350店舗であり、それほど増やしてはいない。出店に関わるコストもあり、これ以上増やしても効果はない。店舗への投資は一段落している」とする。だが「カメラ専門店との連携は強化していきたい。販売員に使ってもらって、販売員のファンを増やしたい」などとした。また、基本的に撤退しているソニー直営店については「直営店舗を構えてもペイはしない」とし、成長戦略においても直営店展開に再び踏み出す考えがないことを示した。
その一方で、オンライン販売の強化が課題だとして、「自前でeコマースをやる予定はないが、ヘッドホンやAVレシーバなど、買うモノが決まっているケースや、設置作業が不要なものはオンラインでの購入比率が高い。こうした商材向けにオンライン販売を強化する」と述べた。
ソニーでは、過去3年間における構造改革の成果をもとに、北米市場において、成長戦略を描く姿勢を示す。
注力するのはテレビ、ホームネットワーク、そしてデジタルカメラだ。テレビ市場については「4Kテレビは、2016年には1200万台規模だったが、2017年には1800万台になると予想されている。特に55型以上はすべて4Kになっていくだろう。また65型、70型以上の市場が伸長しており、65型が品切れを起こす状況になっている。50型のプラズマテレビから、65型、70型に移行していくという買い換え需要が発生しており、55型は2台目需要になっているのが北米市場の現状。100型以上の領域についてはプロジェクタで提案していくことになる。ここはサイズで棲み分けが可能になっており、食い合うことはない」とした上で、「テレビのビジネスに音響をどう組み合わせていくかが、今後の重要な要素になる」と続けた。
今後の展開のなかで注目されるのが、今回の「CES 2017」で発表した有機ELテレビ「BRAVIA A1E」である。北米市場向けには、主流となる65型のほかに、77型、55型もラインアップし、3モデルを販売することになる。サイズ展開は各国ごとの需要動向をもとに、どのモデルを販売するかを決めるという。
「これまで、有機ELテレビというとLGエレクトロニクスしかなかったが、『ようやくソニーが出してきた』というのが市場からの反応である。プラズマテレビの次は有機ELテレビであると考えている人や、薄くて、お洒落なところに関心を持っている人に販売していく」とする。
その一方で、奥田氏は、「液晶テレビと有機ELテレビは、それぞれの特徴を生かしながら売り分けていく」と語る。「有機ELテレビは、ニュースバリューはあるが、これがすべてではない。映画を視聴するには、引き締まった黒や微妙な色調を再現できる点で有機ELテレビに分があるが、スポーツ観戦をするのならば、大画面で明るい液晶テレビの方がいい。ニーズにあわせて、デバイスの特徴を生かした提案をしていく」とする。
ソニーでは、有機ELテレビを主軸に据えたコミュニケーションメッセージにはしない考えだ。「ソニーのテレビであれば、高画質プロセッサ『X1 Extreme』を搭載しており、どのデバイスを活用したテレビでも、ソニーの画質ならば安心であるというイメージづくりを進めたい」としている。
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