「食物廃棄」や「途上国支援」に立ち向かう女性起業家たち--なぜ“ビジネス”で社会活動をするのか

 起業の目的は人によってさまざまだろう。すばらしいアイディアを思いついたという人もいれば、起業そのものが目的という人もいる。技術的問題など、何らかの問題を解決しようと起業に至るケースが多い中、社会的な問題意識を持った社会起業家2人を紹介したい。それぞれ、「食物廃棄」と「途上国支援」という難しいテーマに取り組む女性たちだ。

 Dellが開催する女性起業家向けのイベント「DWEN(Dell Women's Entrepreneur Network)」。南アフリカのケープタウンで開催された2016年のテーマの1つが社会的企業だった。スピーカーとして参加したのが、英国のJenny Dawson氏、米国のLeila Janah氏だ。

右からDell TechologiesのCCO、Karen Quintos氏、Sama GroupとLXMIの創業者兼CEO、Leila Janah氏、Rubies in the Rubbleの創業者兼CEO、Jenny Dawson氏
右からDell TechologiesのCCO、Karen Quintos氏、Sama GroupとLXMIの創業者兼CEO、Leila Janah氏、Rubies in the Rubbleの創業者兼CEO、Jenny Dawson氏

ヘッジファンドマネージャーを辞めてジャム作りに

 Dawson氏は大学を卒業後、ロンドンでヘッジファンドマネージャーという恵まれた職に就いた。報酬は高く、仲間がチャリティ団体などに寄付する中で、自分は他の形で何らかの貢献できないかと考えていたという。

 自転車出勤をしていたDawson氏はある朝、通勤中にたくさんの食料品が破棄されているのを目にする。早速、食品のサプライチェーンを調べた。その結果はDawson氏を驚かせた――。世界で育った農作物の約3分の1が捨てられているというのだ。しかも、60%は回避できるのに……。

 11月のある早朝4時、凍りつくような寒さの中、Dawson氏は実際に青果市場に行ってみることにした。都市の食欲を満たすために世界中からありとあらゆる食材が集まるが、売れないものは破棄される。Dawson氏は破棄に回されていた箱を開けた時のことを、次のように語った。

 「まるで新しい靴が入った箱を開けるような気分だった。中にはMwitemania Beansという豆が入っていたが、何の問題もない。このまま捨てられるなんて、もったいないと思った」「多くは外見が良くない、旬ではないなどの理由で簡単に破棄されている。どうにかしたい、自分がどうにかすべきだと強く感じた」(Dawson氏)。

Rubies in the Rubbleの創業者兼CEO、Jenny Dawson氏
Rubies in the Rubbleの創業者兼CEO、Jenny Dawson氏

 そこで思いついたのは、生まれ育った故郷スコットランドの母が作っていたジャム、チャツネ、コンポートなどの保存食だ。Dawson氏は、食べられるのに捨てられる野菜やフルーツから、ジャム、チャツネなどを作ることにした。しかし、1人で保存食を作るには限界がある。そこで最初の従業員として、Dawson氏が以前、ロンドンの危機センターで3カ月ボランティアとして加わった時に知り合った料理好きの女性を雇用した。

 その後、ロンドンのシェルターで生活していた女性2人を雇い、ファーマーズマーケットの外にキッチンを構えた。人々が関心を持ち、コンセプトに理解を示すことがわかったところで、Dawson氏は本格的なビジネスにすることを決意、「Rubies in the Rubble」(”がれきの中にある宝石”という意味)と名付けた。

 そうやって2011年に創業したRubies in the Rubbleの製品は現在、英国のスーパーマーケットチェーンWaitrose、百貨店Fortnum & Mason、一部のWhole Foodsなどで売れられている。またホテルチェーンのMarriott Group、EATなどの飲食店でも使われているという。

 Dawson氏の目標は、野菜や果物を捨てずに活用すること、そして食料廃棄問題への関心を高めることだ。そこで、製品のラベルには「私たちは味で食物廃棄と戦う」と入れた。ウェブサイトはオンラインでRubies in the Rubbleのジャムやチャツネが購入できる重要な場所だが、それだけではない。起業の経緯を説明し、自分たちの取り組みの成果も知らせている――。たとえば、2016年10月単月で、曲がったキュウリ500本、熟しすぎたトマト3900個、痛みかけたピンクオニオン1300個を捨てずに済んだことなどだ。

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