この連載では、シンガポール在住の筆者が、日本から東南アジアに拠点を移し、テクノロジ企業で働く女性を紹介していきます。赴任、転職、起業などさまざまなきっかけで新たなキャリアの一歩を踏み出した彼女たちに、仕事の奮闘や自身の将来、海外で暮らすことなどについて聞きます。
今回紹介するのは、リクルートでの約2年間のベトナム駐在を経て、現地で2014年11月に起業した矢積悠紀子さん。ベトナム国内のフリーランサーと企業をマッチングさせるクラウドソーシングサービス「GetJobDone」を運営しています。現地のクラウドソーシング事情や、仕事や生活に関する地元のエピソードなどを聞きました。
ベトナム国内のフリーランサーと企業をオンラインでマッチングさせるクラウドソーシングサービス「GetJobDone」を運営しています。マッチングの方法には、複数のフリーランサーから具体的な提案を募集しベストなものを選ぶ「コンテスト型」と、過去の実績や求める報酬の金額などの条件に基づき最適な発注先を選ぶ「プロジェクト型」があります。
ベトナムはフリーランサーが活躍しやすい土壌があると感じています。一般的なベトナムの企業では定時で仕事を終えるのが常識で、多くの社員は残業をしません。家に仕事を持ち帰ることもほとんどありませんので、定時以降は別の活動ができます。また、副業を厳しく制限する企業も少ないため、フリーランサーとして活動しやすいのだと思います。
あるクラウドソーシングサービスが行った調査によると、アジアの周辺国と比較してデジタルマーケティングの領域にフリーランサーが多いというのが特徴のようです。この事業を通して感じている実感値としては、デジタルマーケティングに加え、グラフィックデザイン、ウェブ/アプリデザイン、開発の領域が多いと思います。
グローバル系では「Freelancer.com」と「oDesk」、ローカル系では「Vlance」と「Freelancerviet」です。自分でも以前、ベトナムのフリーランサーを探すためにグローバル系のサービスを利用したのですが、国外からの応募が多く、うまくマッチングすることができませんでした。GetJobDoneでは、ローカルの人材にフォーカスしていきます。
ローカル系に対しては、当面はサービスにより人を介在させることで差別化を図ります。ベトナムではクラウドソーシングをしても仕事が途中で頓挫してしまうことがあるようです。必要に応じてフリーランスと企業の契約前の打ち合わせにスタッフが立ち会い、案件が開始した後にも双方に進捗状況を確認するなどして完結させるように努めます。
このサービスを立ち上げたのも、自分自身が前職でベトナムで仕事をしていたときに、特にマーケティングやデザインの領域でもっと簡単にフリーランサーが見つけられたらと感じたことがきっかけでした。
ベトナムのクラウドソーシングサービスにかぎらず、世界中のクラウドソーシングサービスについても言えると思うのですが、報酬の金額が高く、複雑な仕事であればあるほどオンライン上で適切な発注先を見つけるのが難しいのが実情ではないでしょうか。
旅行予約サイト「Mytour.vn」の運営会社ですね。私が参画したころはとても小さな所帯でしたので、プロダクトの開発やマーケティング、営業などあらゆることに携わることができ、その経験は今のスタートアップ企業の経営に活かされています。
また、リクルートに入社した当時は人事部で採用と企画を担当していました。そのときに携わった社内の人事制度の改定プロジェクトでの経験も、現在の会社での人を採用、評価したり、スタッフのモチベーションを引き出す仕事に活かされていると感じます。
地元企業との付き合い方です。クラウドソーシングは海外では一般的ですが、ベトナムではまだ一般化していないので、想定しない事態に直面します。たとえば、ロゴデザインのコンテストを開催し、40件以上の応募があったにも関わらず、実はコンテストと同時並行でロゴを社内のデザイナーに依頼して作ってしまうなど。ユーザーと企業の信頼の上に成り立つサービスですので、本当にショックが大きかったです。
まずは、ベトナム国内のクラウドソーシング領域で売り上げでナンバーワンになることを目指しています。その上で同じようなプラットフォームを東南アジアの他の国にも展開していきたいと考えています。
他国に展開する際も、参入する市場は「ローカル(人材) to ローカル(企業)」と定義しています。進出先は主に、Freelancer.comやOdeskなどのグローバル系のサービスが参入しにくいであろう英語が公用語ではない国を想定しています。その国の言語を使い、受注するフリーランサーがその市場の文化など特性を理解していないと完了できない仕事があると考えています。
2012年12月に初めてベトナムに来て以来、ベトナムでの生活は3年目になりました。物価は安く、食事も美味しいのでこちらでの生活をとても楽しんでいます。気に入っているオフの過ごし方は、首都のホーチミンからバスで2時間のところにある「ブンタウ」という地元の人たちで賑わうビーチタウンを訪れること。バスが片道約600円で食事や飲み物も安いので、日帰り旅行を一人あたり2000円ぐらいで楽しむことができます。
ただ、主人が日本におり私は単身でこちらにきているので、やはり心細く感じることはあります。なるべく一緒に過ごす時間を作れるよう、2カ月に1度は私が日本に帰るか、主人にこちらに来てもらうなどしています。
主人は「今しか出来ないことだから」と応援してくれていて、いろんな人にも「寛大なご主人ですね」と言っていただけるのですが、内心は申し訳なく思いますし、もちろんとても感謝しています。ベトナムでの事業を軌道にのせて、より自由に動き回れるようにしたいです。
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