「ケンタウルス・モデル」でチャットボットを有効活用するietty--CNET Japan Conference 2016

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 朝日インタラクティブは2016年12月21日、チャットボットビジネスやコミュニケーションの可能性を探るイベント「CNET Japan Conference 2016 -チャットボットで加速するビジネスとコミュニケーション-」を開催した。ここでは、ietty 執行役員CTO 技術本部長 大浜毅美氏が語った、チャットボットと不動産仲介の関係から生まれるビジネスの可能性についてお伝えする。

PDCAサイクルでチャットボットの有効性を高める

ietty 執行役員CTO 技術本部長 大浜毅美氏
ietty 執行役員CTO 技術本部長 大浜毅美氏

 2012年2月に起業したiettyは当初からチャットを利用し、不動産仲介の接客をしてきた。そのため、昨今のチャットボットブームに対して「時代が追いついてきた」(大浜氏)との感想を持っているという。同社の社名でもあるオンライン接客型不動産サービス「ietty」では、会員登録してチャットで相談すると、利用者の希望に応じた賃貸物件を推薦するサービスを展開中。チャットボットは物件の説明に徹し、契約が決まりそうな段階になると有人対応に切り替わる。「丁寧さは人間が優れているため、両者のよさを補完」(大浜氏)する仕組みだ。

 なぜ、非IT分野に分類されがちな不動産仲介でチャットボットを推進しているのか。その理由として大浜氏は、とある記事を持ち出し「Amazonで買えない商品の1つが不動産だから」と説明する。記事は2013年8月のもので現在は改善されているものの、いまだAmazonが不動産を扱っているという話は聞かない。

 その点については、「投資用を除けば(賃貸不動産を求めるのは)1世帯1軒。在庫は常に1つだけ。2週間で(物件契約に至り)入れ替わるため、ECでは扱われにくい商品である」と説明。さらに店舗とECとの違いについても、検索型ECサイトの限界や接客の重要性を踏まえつつ、「店員による接客や試用(内見)といった部分が弱い」ため、iettyはこの分野に注力してきたという。

iettyで導入している人とチャットボットを利用した不動産仲介システム
iettyで導入している人とチャットボットを利用した不動産仲介システム

 ただし、対話型EC導入における失敗例もあると大浜氏は強調する。たとえば、多くの部分をチャットボットに担わせる極端な自動化はAIの未成熟から顧客満足度が低下してしまう。それなら「チャットよりも電話の方が早い」と大浜氏。また、利用者満足度の向上を目指した完全な手動対応もコスト効率の悪化につながると指摘する。

 チャットボットの活用は「簡単に始められることが長所」としつつも、利用シーンなどシナリオを想定しないと顧客の継続利用につながらず、ビジネスにならないと大浜氏は話す。そこで同社が提唱するのが、AI+人間の融合を想定した「ケンタウルス・モデル」だ。情報提供や商品提案といった部分は自動化=チャットボット化し、ビジネスクロージングの部分を人間が対応することで、「(両者が)融合したチャットビジネスシーンを作れる」(大浜氏)。

チャットボットは顧客の利用パターンを判定しつつ、有人でなくとも対応できる部分に利用する
チャットボットは顧客の利用パターンを判定しつつ、有人でなくとも対応できる部分に利用する

 そのためiettyでは、東京・大阪に設置した約10人のチャットセンターが、チャットボットでは補えないところを有人で対応し、約10人の営業マンが内見誘導や実際の内見・契約を担当しているという。これは「物件提案に関する高度な質問に対しては、知識ベースは難しいため、宅地建物取引士免許を持つ営業マンが対応する」(大浜氏)ためだという。

 また、店舗での接客をほぼすべてチャットに置き換えることで、たった20人の人員で月間3000人の対応を実現するなど、契約拠点以外の店舗展開を不要にした。同社はユーザー登録完了時や評価時など、利用者の行動に応答してメッセージを送信する「挨拶ボット」や、登録直後や定期的に物件を提案し、場合によっては築年数など条件緩和を提案することで、利用者の需要に応える「自動提案ボット」、特定のキーワードに含まれる発言や評価が行われた際に、オペレーターにチャット通知をする「キーワードボット」を稼働させている。

機械学習で予測した成約確率をSlackに投稿し、クロージング成功度を高めている
機械学習で予測した成約確率をSlackに投稿し、クロージング成功度を高めている

 注目すべきは「成約予測Yomi-bot」だ。利用者の属性や行動から成約確率を機械学習で予測し、30分程度ごとにSlack(開発者に人気のチームコミュニケーションツール)へ投稿するシステムである。その中で確率が高い利用者に対しては営業マンやオペレーターが対応することで、効果的に人的リソースを活用し、「人とチャットボットの長所を生かして、最大の効果を上げる構成」(大浜氏)を目指しているという。

 その上で、ビジネスにチャットボットを導入する際は、「なぜ必要か」「チャットボットと人間の融合」「オペレーションの構築」を念頭に置きつつ、常にPDCAサイクルを回しながら、実践と改善を繰り返すべきだと強調した。同社ではこれまでのノウハウを生かし、2017年1月からチャットボット導入・運用の相談案件に対応するとしている。

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