2016年8月23日、東芝は無線LANを内蔵したSDHCカード「FlashAir」にEyefiの技術「Eyefi Connected」を搭載すると発表した。これは、東芝とEyefiが締結した技術ライセンス契約に基づくもので、ユーザーの中には驚いた人もいることだろう。
Eyefiは、リコーの研究開発子会社であるRicoh Innovations Corporation(RIC)にもクラウド事業を売却し、同年8月にアイファイジャパン株式会社も解散している。
FlashAirとEyefiカードという無線LANを内蔵したカードを持つ東芝とEyefiの2社は、長くライバル関係にあるとの見方をされてきた。
その2社がなぜ、ライセンス契約に至ったのか。東芝 メモリ事業部 メモリ応用技術第一部 メモリ応用技術第三担当 参事 上岡裕一氏と東芝 メモリ営業推進統括部 メモリ新規ビジネス営業推進部 参事 児玉英治氏に、Eyefiとの関係、技術ライセンス契約を締結した背景を聞いた。
上岡氏:私は、2011年からFlashAirの開発を担当しています。開発当時、社内ではSDカードに無線LANを搭載することで、カメラ対カメラで写真を交換させたいというモチベーションがありました。
もちろん、Eyefiカードの存在は知っていましたが、われわれが目指すところのカメラ対カメラは実現していない。しかも、Eyefiカードはクラウドを経由する製品であるという認識でした。
また、その頃はまだスマホスパイラルが起こる前でした。どういう形で写真データを共有させればよいのかを検討する中で、出会い頭に通信して写真データを交換するといったイメージでFlashAirを作り始めました。SDカードの成り立ちとして、SDアソシエーションを引っ張る立場ですので、標準規格化を目指すことになります。つまり、カメラ側に無線カードを操る機能・ソフトを搭載していないとカード対カードで写真データの交換ができない。
当時は無線カードにおける写真データ交換に対応したカメラはありませんでしたから、今後どれくらい普及するものなのかという話になりますよね。正直、無線カードを持ったカメラ同士が、街中で出会う確率はかなりレアですから。
さてどうしたものかと考えた時に、スマートフォンが普及しはじめて、スマートフォンにさえ写真データを送れれば、ネット回線につながる──つまり、スマートフォン経由で写真データがシェアできるわけです。結果、無線カードとして、そうした商品仕様に行き着きました。それを市場に出すと決まったのが、2011年末の話です。それで、2012年の初めに商品を発表し、『カメラで撮った写真を、スマートフォンを経由して複数人でシェアできます』と世に出したわけです。
FlashAirがEyefiカードと大きく違うところは、FlashAirがカメラ側の操作を必要としていない点です。カメラ側は電源供給さえしてくれればいい。そして、それによって、カメラでも使えると受け入れられました。
スマートフォンに対しても、当初はスマートフォン専用アプリを用意していませんでしたが、ブラウザで対応しました。たとえば相手とシェアしたい時、その相手に専用アプリをダウンロードさせることなく、ブラウザベースでデータをシェアできる。カメラとカードとスマートフォンとブラウザという形に着目して、カードがアクセスポイントとして機能することで、スマートフォンからもデータにアクセスできるようになる。相手にデータを送るのではなくて、相手がデータを取ってくるという形ですね。
そういった意味で、Eyefiカードは、相手方にプッシュで送る製品なので、まったくの別物ですし、当時のEyefiは、スマートフォンに送る仕様ではなかったので、同じ無線カードであっても、まったく別のものと認識していたわけです。
確かに、当初は同じ無線カードということで比較はされましたが、性質の異なる製品ですから、東芝(FlashAir)としては、同じ無線カードだけれども共存できるという認識でした。
Eyefiカードのバックアップ用途やサーバへのアップロードを自動化したいといった使い方とFlashAirのワイワイと皆で写真をシェアするという使い方はシチュエーションとしてまったくの別物です。それで、写真をシェアする製品であるというアピールのために、女優の有村架純さんを起用して広告展開をしました。
その後、ブラウザだけでなく、スマートフォンアプリでさらに便利に使える(一括または、複数ダウンロードなど)というように変更していきました。これが、FlashAirの創世記の話になります。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス