――Brightcove Socialに話を戻すと、「YouTubeで十分なのでは」という声はマーケティング担当者からも聞かれそうですが、あえて専用のツールを開発した狙いはどこにあるのでしょうか。
北庄司氏:私たちとしては、視聴者へのリーチ拡大などや無償で利用できることを背景として「YouTubeは絶対に活用しましょう」と言っています。否定派では決してありません。ただ、アップロードした動画の所有権がGoogleになってしまう点や、アップロードして拡散した後のコントロールが難しい点、視聴環境の担保が一切できない点などは担当者が知っておかなければなりません。
加えて、オウンドメディアにYouTubeの動画をエンベットして視聴環境を作っている企業も多く見られますが、そうした場合にはせっかく集客した見込み顧客をYouTubeに流出させてしまう可能性があります。
たとえば、プレイヤーに設置されているYouTubeボタン(YouTubeサイトで動画を視聴するためのボタン)や関連動画のおすすめなどから、YouTubeのサイトにジャンプしてしまえば、視聴者の興味関心が変化してしまいオウンドメディアには戻ってきてくれなくなってしまいます。自社で計測してみたところ、YouTubeサイトに流出したユーザーが戻ってきてくれる割合は1%を切っているのです。
また、BtoBのマーケティングでYouTube動画を活用している場合に気を付けたいのは、YouTubeの視聴環境です。日本アドバタイザーズ協会のWeb広告研究会が2015年に実施した調査では、依然として20%近くの企業でYouTubeを閲覧できない環境があります。つまりYouTubeを使って動画マーケティングをしようと思っても、肝心のターゲットユーザーは視聴できないわけです。
重要なのは、オウンドメディアとYouTubeで主従関係を明確にしておくことだと思います。手軽さゆえにYouTubeを主として動画コンテンツの展開を考えがちですが、それにはいくつかの課題があるわけです。オウンドメディアにコンローラブルな動画配信環境を構築して、それを主としてYouTubeを活用してもらうというのが、Brightcove Socialの狙いの大きなところです。
――オウンドメディアでの動画コンテンツ活用を主軸にしたコンテンツマーケティングを考えることが重要ということですね。
大野氏:動画コンテンツも目的によって使い分けの時代がくるのではないかと思います。たとえば、「認知」のフェーズであれば、ブランディング動画や商品サービスの説明動画を、YouTubeなどを活用して広くユーザーにリーチさせることが適していると思います。
しかし、自社サイトを訪問して「比較検討」や「行動(購買・問合せ)」を行うフェーズでYouTube動画を使うと、そこから見込み顧客が流出してしまう可能性がありますよね。企業が自分で“逃げ道”を用意してしまうのです。そこでは適した動画コンテンツと自社オリジナルの視聴環境を用意する必要があると思います。
すでに欧米のデジタルマーケティングではスタンダードな考え方で、海外のマーケターの中には、「オウンドメディアにYouTubeを張るのはブランディングとしてよくない」という意見さえ生まれているほどです。日本では広告会社などを中心に依然として「作って満足してしまう」という印象が強く、配信環境の使い分けまではあまり意識していないのかもしれません。
北庄司氏:重要なのは、カスタマージャーニーの中でどのタイミングで、どの環境で、どのような動画コンテンツを視聴すれば、ユーザーに響くかを意識して戦略的に動画コンテンツを活用していく必要があるということです。
多くの企業が動画コンテンツを数多く制作して、YouTubeチャンネルに蓄積してきている中で、“次の一手をどうすべきか”というテーマについて誰も提案できていない状態にあるのが今だと思います。コストを掛けて蓄積してきた動画コンテンツの資産から、どうやってビジネスのインパクトを生み出すかということが、今後の大きなテーマになるのではないでしょうか。
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