Raspberry Piには、カメラから温度計、モーター、点滅するライトまで、さまざまな機器を接続することができる。このため、このコンピュータはあらゆるプロジェクトの土台になる。
「自然に興味があれば、鳥の巣箱のプロジェクトがある。音楽なら、シンセサイザーの作り方を学ぶこともできるし、ロボットなら、Raspberry Piをその頭脳に使う方法もある」(Richardson氏)
子ども向けのスクールプログラムをデザインするMelissa Jurist氏にとって、Raspberry Piが魅力的な理由はこの柔軟性にある。デラウェア大学のエンジニアリングカレッジでK-12(幼稚園から高校卒業までの教育期間の子ども)への支援活動を運営する彼女は、子どもたちが少し危なっかしいプロジェクトに取り組むときに、特にワクワクするという。荒削りで突飛で、親が反応に困るようなものが生まれるプロジェクトだ。
「子どもたちが、Piを使って滅茶苦茶なものを作っていても放っておく。これも重要なことだ」とJurist氏は話す。 「今のクールな子はiPhoneを持っているかもしれないが、さらにクールな子は自分たちのデバイスを巧みに使って何かを作り出す方法を知っている」(Jurist氏)
しかし、Raspberry Piには、子どものおもちゃにとどまらない使い道がある。
ロチェスター工科大学でコンピュータエンジニアリングを学ぶ学生は、4年次のプロジェクトでデバイスを作るが、この中枢部にはしばしばRaspberry Piが使用される。例えば、ホームセキュリティ監視や家電の操作を可能にするデバイスから、天気予報をTwitterに投稿する気象ステーションまで、同コンピュータは幅広く活用されている。
「あらゆる機能が内蔵された基板があるため、学生は自分たちが動かしたいアプリケーションに集中できる。時には1年の大半を費やすことになることもある基本的な電子回路上の作業を省略することができるのだ」講師でエンジニアのRoy Melton氏はそう話す。
また、ウースター工科大学では、大学院生向け航空宇宙工学プログラムのなかで、Raspberry Piをドローンの操縦に活用している。
「私たちには、十分なパワーがあって飛ばすこともできるコンピュータが必要だ」とRaghvendra Cowlagi教授は話す。
「50ドル以下でこれほどパワフルなものはない。これなら、壊れてしまってもまた手に入れればいいだけだ」(Cowlagi氏)
Raspberry Piは次世代のエンジニアの育成に大いに貢献しているが、このコンピュータの利点はこれだけではない。
「テクノロジが人々の生活のあらゆる場面に広がるなかで、現代社会は技術的なリテラシーを持った人を必要としている」そう話すのは、ペンシルバニア州ブリンマーのボールドウィンスクールでコンピュータサイエンス学部の学部長を務め、Computer Science Teachers AssociationのメンバーでもあるLaura Blankenship氏だ。
「ボールドウィンのミドルスクールの授業では、『国家の安全保障と個人のプライバシーのバランス』のような社会的な問題を取り上げるが、コンピュータがどのような仕組みで動くかを知ることは、こういった問題への取り組みに役立つ。見識を深めた学生は、製品やサービスが人々の生活に深く根付いた大手テクノロジ企業に対しても、問題提起ができるようになる」とBlankenship氏は話す。
「一度でも携帯電話のようなものを作れば、『携帯電話にはなぜ削除できないソフトウェアがあるのか』というような疑問も湧いてくるだろう」(Blankenship氏)
この小さなコンピュータには大きな期待がかかっている。これほどの成功を収めることを、一体誰が想像できただろうか。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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