12月6日の午後、韓国の国会で開かれていた朴槿恵(パク・クネ)大統領の疑惑を巡る聴聞会の模様がテレビで生中継されていた。
「午後のワイドショーでもこういうカタい話、しかもよその国の話を扱うんだな」などと意外に感じてしばらく観ていたが、なかでも特に印象的だったのはサムスン財閥の御曹司、李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が野党議員から質問責めにあってしどろもどろになっていた様子。どことなく「職員室に呼び出された優等生」を連想させたあの受け答えぶりに強い印象を受けたのはどうやら私だけではなかったらしく、7日朝の情報番組でも冒頭で「なぜサムスンに質問が集中したか」といった取り上げ方でこの話に触れていた。またBloombergにも下記の見出しが付された記事が出ている。
今回は「この聴聞会に李副会長がどうして呼ばれることになったか」という点をおさらいした上で、韓国経済の2割弱(約17%)を占めるとされる同グループの世代交代(継承問題)と、それに絡んで利益獲得を狙う強面の米ヘッジファンドの動きなどをざっくりと紹介する。
先に断っておくと、この記事はElliot Management(以下、 Elliot社)というヘッジファンドの文字通り「機を見るに敏」な活動ぶりなどに注目するものであり、ある種の「陰謀説」を示唆するつもりは毛頭ない。同時に、ニュースの野次馬として「同時平行で進行する直接関係なさそうにみえる事柄が、この先どこかで交わったらどうなる?」といった興味もあり、その点も整理しておきたい。
上記のBloomberg日本語記事の中に下記の一節がある。
米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントが反対したサムスン関連企業の合併計画について、崔被告が韓国の国民年金公団に賛成票を投じるよう圧力をかけ、その見返りとしてサムスンが同被告に賄賂を提供したとの疑いがある。検察当局は11月にサムスン電子の社屋や国民年金公団の事務所を家宅捜索した。李副会長は議員らに対し、崔被告をいつ知るようになったか覚えていないと答えた。
ここで留意しておきたい固有名詞は、疑惑の人とされる「崔被告(崔順実、チェ・スンシル)」以外に、「エリオット・マネジメント」と「国民年金公団」の二つ。
「エリオット・マネジメント」は上述のElliot社のこと。同社について検索すると、たとえば2014年に「EMCに対してVMwareを分社化するよう圧力をかけた」とか、その後「EMCを買収したDellからソフトウェア部門を買い取った」という情報が見つかる。
またそれ以外に、同社がアルゼンチン政府を相手に10年以上にわたって続けていた争い(債権取り立て)で、2016年3月にようやく手打ちをした、といったニュースも見つかる。
後者のNYTimes記事は、もともとヘッジファンドなどのやり方に批判的なJoseph E. Stiglitz(ノーベル経済学賞受賞者)らがまとめた寄稿記事で、その中には「アルゼンチン政府が支払いに合意したことで、NML CapitalというElliot社の子会社は1億7700万ドルの投資に対して、22億8000万ドルのリターンを手にした」とも書かれている。
Elliot社は、いわゆる「物言う投資家」、あるいはひと頃流行った言い方を借りれば「ハゲタカファンド」だろうが、一国の政府を相手にこれだけ長く戦えるハゲタカというのもそうたくさんはいないのではないか(実際のところはよくわからないが)。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス