Snowden氏やPrivacy Internationalなどの権利団体を通して、われわれは、英国の諜報機関が何年にもわたってひそかに大規模なデータ傍受と収集、ハッキングを行っており、時には人権も侵害していることを知った。しかし、調査権限法が成立したことで、これらの活動も法的な後ろ盾を得た。
調査権限法は、機器に侵入して大規模な監視と大量の通信データを収集することに関して、明確な枠組みを設けている。この点は同法に関して、英国外に住む人々にも影響が及ぶ部分だ。
Privacy InternationalのCaroline Wilson Palow氏は、「IPA(調査権限法として知られることになる法律)によって、疑わしい法的権限を根拠に何年も前から秘密裏に行われてきた規制のない大規模な監視慣行は、抑制されるのではなく、その慣行が法的に保護されてしまった」と述べている。
法案の最初の草案が発表される前、英国政府は暗号化を完全に禁止しようとするのではないかと考えられていた。暗号化とは、個人情報を保護するために、一定の規則に従ってデータを変換することだ。政府は暗号化を禁止しようとはしなかったが、その代わり、政府から命令があり、復号が「実行できる」場合に、企業が復号するように主張した。
つまり、保安局と警察は合法的にコンピュータをハッキングし、電話を傍受することができるようになる。英国内で営業する企業は、国外に拠点を置く企業も含め、保安局と警察のそうした活動に協力することが求められる。
2016年に入ってからAppleと米連邦捜査局(FBI)が「iPhone」のロック解除をめぐって、論争を繰り広げたことをご記憶だろうか。サンバーナーディーノ銃乱射事件の容疑者が所有していたiPhoneに関して、FBIがやろうとしたことと同じように、英国政府は企業に復号のほか、アカウントや端末へのハッキングを命令できるようになる。
最大の違いは、政府が企業にデータの暗号解読を命じるとき、かん口令も出して、その企業がその件について口外するのを禁止できることである。つまり、公然と繰り広げられたAppleとFBIの論争と異なり、すべてが水面下で行われることになる。
また、この法律では、企業が新製品のセキュリティ機能について、発売前に政府に通知することも義務づけられている。警察がその新製品のデータも傍受できるようにするためだ。
調査権限法には、人々の閲覧履歴の確認だけに留まらないハッキングや監視活動については、法執行機関や諜報機関は令状を取得する必要があると明記されている。
英国政府は、Snooper's Charterによって、ハッキングや大規模なデータ収集のための安全措置が大幅に改善されたことを強調したがっている。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)