彼らの目的は、勉強仲間を見つけてのモチベーションアップ。そこには「勉強していることが恥ずかしい」という意識はまったく見られない。「今日はこれだけ勉強する!」「目標は◯点!」「テストで◯点取れました!」など、目標に向かって努力して、夢を叶えたいという純粋な願いにあふれている。Instagramではいわゆるリア充の子たちばかりが目立つが、実際はこのように学生らしい悩みや願いを持って、夢のために頑張っている子たちも多いのだ。
微笑ましいハッシュタグもある。「#大学生になったらやりたいことバトン」では、受験に合格して大学生になったらやりたいことを列挙している。「バイトをする」「彼氏を作る」「サークルに入る」「友達を作る」「髪を染める」「パーマをかける」「友だちと遊ぶ」など、健気な望みがたくさん並んでいる。
なぜ、勉強垢は生まれたのだろうか。考えればわかるが、自分の成績や勉強内容などはリアルの友だちには意外と言いづらいものだ。点数が良ければ良いで「自慢」ととられかねないし、点数が悪くてもやはり言いづらい。「勉強を頑張る」と言いすぎると友だちから敬遠される可能性もある。だからこそ、かつては「勉強していない自慢」をし合うのが普通となっていた。その点、勉強垢は自分の点数や勉強時間を素直に書いてもいい場所だ。周囲の目を気にせず「勉強を頑張る」「◯◯大学に入りたい」と言っていいし、「今日はこれだけ勉強した」「目標の◯点をクリアした」と言っていいのだ。
「◯◯大学合格」などの目標を紙に書いて貼っていたという人もいるのではないか。そのように、自分の目標は言語化すると叶いやすくなる。TwitterやInstagramで目標を宣言することで、モチベーションが高まる効果につながっている。もちろん、悩みや不満などを吐き出すことでストレス発散につながる側面もある。
高校生のSNS活用には、リア充自慢や見栄の張り合いに陥ったり、他人の投稿で意味なく落ち込んだり、気を使いすぎて疲れている例なども少なくない。けれど、このような建設的な使い方がされている例もある。
確かに、SNS更新に懸命になりすぎて途中で終わっている勉強垢もある。「SNSに夢中になりすぎて勉強できない」本末転倒の子もいるのは確かだ。しかし高校生たちは、少なくとも大人たちよりも普段使っているSNSを柔軟にツールとして使いこなしている。そして、自分を見失わず、SNSという現代的なツールを活用している。「Instagram=ビジュアル重視」という先入観を捨て、交流の場として活用している彼らが夢を叶えることを願う。周囲の大人は、SNSを一律に悪いものと考えるのではなく、彼らの利用実態を知っておくといいだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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