2015年6月に公職選挙法の一部を改正する法律が成立、公布された。これによって、年齢満18歳以上満20歳未満の者が参加できるようになった。先日、いよいよ選挙権の年齢が引き下げられてから初めての選挙が実施されて話題となった。
総務省によると、投票率は18歳が51.17%、19歳が39.66%と、18歳の方が高かった。18歳は高校などで主権者教育を受ける環境にある一方、19歳は大学生や社会人になっており、親元を離れながらも住民票を移していない人が多いためという見方が強い。
なお、総務省の抽出調査によると、参院選での20歳代の投票率は1992年以来20~30%台にとどまっており、今回の18、19歳の投票率は過去の20歳代よりは高い水準となっている。
今回は18、19歳による初選挙記念として、高校生たちが選挙に参加する際にSNS上で起きる問題や、彼らが選挙に行きたくなる仕掛けについて考えていきたい。
今回、選挙後にある高校にうかがったところ、現場教員は非常に困惑気味だった。「うちの生徒たちは、『選挙に行け』と指導したので行ったと思いますけどね。実際に行ったのかまでは分かりません」と首を傾げる。
ある教員は、教え子の中に「自分は5番目に投票した」と言っていた生徒がいたと話す。教員がどうしてそんなに早く行ったのかと聞いたところ、生徒は「『最初に来た人は投票箱の中身を確認できる』と先生に聞いたから早く行ったけれど、5番目だったからできなかった、残念」と答えたそうだ。「選挙に行かせるために教員が言えるのはそのくらいなのかもしれないですね」(教員)。
またある教員は、「選挙違反が怖い。子どもたちがSNSで何をしているのか分からない。学校はそこまで把握できないので心配」という。2013年の法改正により、選挙でインターネットを使うことが可能となった。有権者は、ブログやSNS、またSNSのDM(ダイレクトメッセージ)や動画を使って候補者を応援することが可能となった。
一方の候補者は、メールや携帯電話のSMS(ショートメッセージ)での選挙活動が可能となっている。SNSでシェアされた候補者のメッセージや動画などを見かけた人も多いだろう。
一方、高校3年生は、同じクラスメイトでも、有権者である18歳と選挙権がない17歳が入り混じっている状態だ。有権者である18歳は候補者を応援するメッセージをSNSに投稿してもいいが、同じクラスメイトでも、選挙権がない17歳がこれをリツイートすると選挙違反となってしまうのだ。
どこからどこまでがいいのかなどが分かりづらいので、さまざまなQ&Aページが用意されたが、周知徹底はできていたのかどうか。私が見ただけでも、かなりボーダーラインに触れる投稿が複数見られた。
ちなみに、違反すると「一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金」や「五年間の選挙権停止」に問われることになる。警察庁によると、「未成年者の選挙運動」を理由に送致された人は、2009年衆院選で7人、2010年参院選で1人、2012年の衆院選で3人いるという。
木原稔・党文部科学部会長は、Twitterで「残念ながら教育現場に中立性を逸脱した先生がいます。18歳の高校生が特定のイデオロギーに染まった結論に導かれる事を危惧しています。そこで、学校教育における政治的中立性についての実態調査を実施します。皆さまのご協力をお願いいたします」とツイート。
そこには、自民党による「学校教育における政治的中立性についての実態調査」のURLがつけられていた。「政治的中立を逸脱するような不適切な事例を具体的(いつ・どこで・だれが・何を・どのように)に記入してください」とあり、高校生が教員を通報できるようになっていた。高校教員もこれには危機感を抱いているようで、「揚げ足を取られて指摘される可能性もあり、何も指導できなくなってしまいかねない」と危惧していた。
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