VRを既存のゲーム視点から評価してはいけない--先駆者たちが2年ぶりに語るVRの現状 - (page 2)

既存のゲームと比較した視点だと、いい評価が出るわけがない

  • 原田勝弘氏

 原田氏は、製品版としてリリースされたサマーレッスンの手応えについて「圧倒的な1位の状態」と好調ぶりをアピール。ユーザーからの反応については大きく分けて「素直にVRの凄さに感動や興奮する人」「雑誌で事前に情報を集めたり、体験会などで試した上で、改めて確認して感動したりする人」「VRの凄みは感じるものの、既存のゲームとして評価する人」の3つに分かれているという。

 この3つ目の反応である“ゲームとして評価する”という視点で見た場合、あまりいい評価がされていないことに触れ「既存のゲームと比較した視点で見られると、いい評価が出るわけがない」と主張。重要視しているのはVRならではの体験であり、内容自体も比較的シンプルなものも多い。PS4という据え置き型ゲーム機の周辺機器という側面はあるものの、既存のゲーム視点で見ると、映像体験とゲームを分けて見てしまう傾向があるため、映像は良くてもゲーム性が低いために低評価を受けてしまうと指摘する。

 VRは体験しないと伝わらないものというのは周知の通りであり、これらのコンテンツを体験した人が驚いたり怖がったりして、実際に評価されている。そのことを踏まえ「言葉でレビューして評価されたものを見ただけではわかるわけではない」とし、既存の概念やゲーム的な枠組みに当てはめて評価してはいけないと指摘した。

 ちなみにサマーレッスンのリリース後、想定していなかった評価として「実況プレイ向き」という言葉が多かったことを挙げ、原田氏も実際に見てそう思い、VRコンテンツの可能性がまだまだあるということを実感したという。

  • 小山順一朗氏

 小山氏も、VR ZONEで用意したコンテンツを「ゲーム」や「アトラクション」とは呼ばず、「アクティビティ」という言葉を使用。統一した体験を提供するアトラクションとは違うものであり、また攻略していくという概念のあるゲームとも違う。成功も失敗もあるような体験を重要視したことから、アクティビティと付けたという。

 VR ZONE向けのアクティビティ制作においては、前述のようにコアゲーマーではない一般の客層を想定していたこともあり、これまで培ったゲーム性や演出をあえて外したという。実際、ゲームの演出では当たり前になっているBGMも、無音にしたほうがリアルさを感じられ、興奮度が増したと振り返る。

 また運用面においても、基本的にゲームは自動的に始まりゲーム内で説明が行われ、自動的に終わるもの。だが、VR ZONEのアクティビティではその要素をバッサリと切り、スタッフが口頭で内容や操作方法を説明する形をとった。こうすると、スタッフの説明内容や体験前後の対話によって、体験者のプレゼンスや評価が変化したという。単に機器の装着指示だけではなく、アクティビティの世界観や設定も話すようになるとグッと没入感が上がり、反応もよくなっていたっという。

 近藤氏からは、VRの体験がすごいものであるがゆえ、VRの世界に入る前の心の準備が必要だと指摘。プレゼンスを高めるために、VRの世界に浸ったり慣れさせるための時間なり説明が大事だと説く。原田氏も、サマーレッスンのデモ版では、暗転しているときにエアコンや外を走る車の音といった効果音を3秒間ほど聴かせて「ここは室内だ」と思わせてから、部屋に入ったシーンを映し出すと没入感が上がったと語る。こういう少しの工夫でもプレゼンスが変わってくるため、タイトル画面やイントロ部分での工夫にまだまだ余地があるとした。

 小山氏は、さらに一歩進んで「ネタバレした方がかえっていい」とも付け加えた。地上200mの高所にせり出された板の上を歩く「高所恐怖SHOW」でのある取材において、何の説明もなくいきなり連れられてきた人が板の上を歩くところだけをやらせてみても、怖がらなかったという。しかしながら、事前説明を受けてその様子を見ていたスタッフが、冒頭のエレベーターで上がっていくところから体験してみると、本気で怖がっていたと振り返る。

 ほかにも「ガンダムVR ダイバ強襲」において、2人の若い女性で実験した実例を披露。まずひとりの人にコンテンツ自体の説明も行わずに体験してもらったところ、なんとなく状況を見ているという淡々とした雰囲気であったのに対し、もうひとりのほうはザクが襲ってくることなど、これから起きるシチュエーションをネタバレになるくらいに話した上で体験してもらったところ、「ヤバイヤバイ」と連呼しながら取り乱し、悲鳴をあげていたという。

「ガンダムVR ダイバ強襲」で、ネタバレになるほど状況説明を事前に行った利用者の体験映像より。スタッフがサポートに入るほど取り乱していた
「ガンダムVR ダイバ強襲」で、ネタバレになるほど状況説明を事前に行った利用者の体験映像より。スタッフがサポートに入るほど取り乱していた

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