ボルボがVRよりARを選んだ理由--「HoloLens」で進化する自動車開発 - (page 2)

Antuan Goodwin (CNET News) 翻訳校正: 編集部2016年11月01日 07時00分

 つまり、もっと没入的でシングルユーザー向けのVRシステムに比べると、HoloLensの方が共同作業用ツールとしての有用性が高い。Volvoは、エンジニアリングやデザインに関する社内会議でHoloLensを活用している。会議室でHoloLensを装着した数人のエンジニアが、例えば、目の前の空間に浮かび上がった仮想のサスペンションのまわりを歩き回ったり、それについて意見を交わす光景を思い浮かべてほしい。それだけではない。互いに会話やジェスチャーを自由に交わすことができ、(最も重要なことだが)壁やテーブル、あるいは相手とぶつかることもないのだ。

 Volvoは、動かないスライドでプレゼンテーションしたり、CAD(コンピュータ支援設計)端末の周りに集まったりするよりも、HoloLensが高い効果を発揮するものと期待している。このAR技術は、同社のさまざまな研究分野にまたがってエンジニアやデザイナーによるコミュニケーションの効率を高め、ソフトウェア開発に匹敵する速さで、物理的な自動車の開発を加速させる役割を果たすのは間違いないだろう。

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Volvo 90シリーズとSPAプラットフォームは、最初の試作車両が作られる前にデジタルで設計され、改良された。
提供:Antuan Goodwin/Roadshow

VolvoとHoloLensのさらなる可能性

 Volvoは、HoloLensの開発用試作品1台につき約3000ドルを投じるなど、ARに多額の資金をつぎ込んでいる。筆者が参加したデモでは、少なくとも6台ないし8台のヘッドセットが用意されていた。同社のヨーテボリキャンパス全体で、まもなく登場するSPAや「Compact Modular Architecture(CMA)」採用車を担当するエンジニアリングチームとデザインチーム向けに、さらに数十台は確実に導入しているだろう。

 そしてこれは、ほんの一部にすぎない。VolvoはヨーテボリのHoloLensチームのほかに、同プロジェクトを世界各地のデザインチームとエンジニアリングチームに拡大しようとしている。

 Volvoはまた、自社の工場やサービス業務に従事する従業員向けのトレーニング用ツールとして、そしてゆくゆくは顧客向けのツールとして、HoloLensとAR技術をVRと併せて使用することも検討している。将来は、Volvoディーラーの技術者がHoloLensを使って、目の前にある実物のエンジンルームに仮想的に投影されたグラフィックなチュートリアル画像を使って、車のメンテナンス方法を学ぶようになるかもしれない。おそらくは、販売員が顧客の顔にHoloLensを装着させ、新しいV90のセーフティー機能を教える日もやってくるだろう。

 Volvoは、エンジニアリングに焦点を合わせてMicrosoftと提携しHoloLensを試験するという点では、初の自動車メーカーなのかもしれない。ただし、VRであれARであれ、3Dによるリアルな仮想空間を試みている自動車メーカーはほかにもある。PorscheやAudiなどはOculus Riftをショールームに導入しており、顧客の購入プロセスの一部として、車の仕様を決めて視覚化するのを支援するツールとしている。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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