アジアで最も物価が高い都市は香港――。組織・人事コンサルティング会社マーサーが「2015年世界生計費調査」の結果として発表した。
この調査は多国籍企業や政府機関が、海外駐在員の報酬・手当を設定する際に利用されているもので、世界で最も包括的な生計費調査の1つ。香港が1位に君臨する主な理由として、住居費が高騰し、価格・賃料の上昇に現在も歯止めがかかっていない状況が挙げられるだろう。
香港は、東京都の約半分にあたる約1100平方キロメートルの面積に730万人超の人びとが生活している。面積の約60%は山地であることから、香港の住宅地は限られた地域に集中しており、人口密度の高さは世界でもトップクラスだ。
人口に対して住宅地の面積が狭く、投資家の旺盛な需要もあることから、築10年以上の中古物件であっても、日本円換算で1億円を超える価格で売買されるケースも多い。頭金だけでも4000万円以上が必要であるなど、日本では想像もつかないような住宅価格となっている。
賃貸住宅に住む一般的な香港市民は、契約更新のたびに値上がりしていく家賃のため、頻繁な引越しを余儀なくされる。また、住居と同じ背景から、「駐車場」を確保するのも至難の業。そのため、華麗な縦列駐車のテクニックを駆使し、狭いスペースに路上駐車をする者が後を絶たない。
そんな中、2016年の夏にリリースされ注目を集めているのが「TingPark」という駐車場検索サービスのアプリである。
駐車場の空き状況がリアルタイムに分かるTingParkは、香港生まれのJason Zeall(肅銘漢)氏が立ち上げたアプリ。2015年9月に会社を設立した後、エンジェル投資家からの資金調達を経て、2016年7月にiOS対応アプリを公開した。現在約5000人の利用者がおり、香港発のスタートアップとして注目されている。
創設者でありCEO のJason Zeall氏は、ファイナンス・会計を学び、卒業後に投資銀行で働くという香港の伝統的なキャリアパスを経て起業した。創設メンバーとして、ブラジル出身のエンジニアでCTOを務めるJRobert Parcus氏と、中国出身のチーフデザイナーZoe Yu氏の2人が参画。3人が使用可能な言語は、あわせて6言語。マルチナショナルなチーム編成となっている。
アプリは「Google マップ」を通じて、工業・商業エリアを中心に、域内約260カ所の駐車場のリアルタイム情報を配信。駐車場の空き状況を色で表示する仕組みとなっている。
現在香港で展開されている同種のアプリは、商業施設などの駐車スペースを示すものばかりで、1つのアプリで横断して検索可能なものはない。これまでユーザー側は、複数の駐車アプリをインストールし、必要に応じて使い分ける必要があった。
Jason Zeall氏は、ビジネスモデルとしてアプリ内に広告を表示してマネタイズする手法を考えているようだ。今後は他社との提携を検討しており、マップ上にスーパーマーケットやガソリンスタンドなどを表示し、利用者向けの優遇プロモーションを実施していく計画だと述べている。
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